第27話

朝が来た。

俺が求めてやまない日の朝が来た。

「…あぁ、そうかァ…来ちまったのかァ」

ついにこの日が来た。

あいつに、この世界の主人公は誰か分からせてやるための、この日が。

「はァー…最高の朝だ」

最高に気分がいい。こんなにも学校に行くのが楽しみだと思ったことはない。

「分からせてやるよ…神崎にも陽介とかいうガキにも、ここが誰の世界かを」

支度を済ませ家を出る。

しばらく歩いていると、町の様子がおかしいのに気づく。

誰も彼もが騒がしい。何か事件でもあったのだろう。

俺はさらにいい気分になった。

何があったか予想がついたからだ。

「くはははっ…そうか神崎ィ…起動させちまったかァ」




何も見えない。

体が動かない。

身体中が痛い。

何があったのか分からない。

ただ、横で誰かの声が朧気に聞こえるだけ。

(そっか…俺死ぬのか)

生きている気がしない。当然だ。

いきなり爆発が起こったんだ、目の前で。

生きているわけも無い。

(もう少し、この人生楽しみたかったな)

意識が途切れそうだ。もう、こうして、かんが、え、る、ことも…




やだ、やだ。もう見たくない。

信じたくない。目の前の現実を信じれない。

けど、ダメだった。足が動いた。

「勇也!!!」

「華山さん!?行っちゃダメだ!中には炎が…」

「離して!!勇也がそこにいるの!」

「神崎くんはもう手遅れだ!」

「黙って!!」

近くにいたクラスメイトの手を跳ね除け、勇也の近くに寄る。

「ねぇ、勇也、勇也!」

私の前に横たわる勇也に声を掛けるが、勇也は何も言わない。何も。

「返事しなさいよっ!ねぇったら!」

それでも反応は無い。

「…嫌よ、いやよぉ…」

思わず涙が出る。もう泣かずにはいられなかった。

「…!華山さん!火が広がってる!早くこっちに来るんだ!」

「…」

「華山さん!」

「……!勇也!」

まだ息がある。勇也は生きている。

「…ちょっと!誰か来て!」

「は、はぁ!?何を言って…」

「生きているのよ!手を貸して!」

「なっ!?わ、分かった!」

良かった…勇也はまだ生きている。急いで救出しようとする。が、何やら後ろが騒がしい。少し目を向ける。

「…あ、亀井」

「どうしたんだよ、早く逃げ…うわっ」

「…亀井くん?」

亀井くんが来る。手伝ってくれるのだろうか。

「…よぉ」

「手伝ってくれるの?だったら…」

「ざまぁねぇな」

「…は?」

「亀井…冗談なら後にしてくれないか」

「冗談だって?俺は本気だ」

「…どういうこと」

「分からねぇか?爆弾を仕掛けたのは俺だ」

その言葉を聞いて、私は初めて殺意が沸いた。

「…なんで?なんでそんなことを」

「…お前らは知らねぇだろうなぁ…俺はな、こいつさえいなければもっと楽しく生きられてたんだよ」

「どういうこと?」

「ま、お前らには言っても無駄な話ってことだ」

「そんなことより!爆弾を仕掛けたってどういうことだ!」

手伝ってくれてたクラスメイトが声を荒げる。

「見ろよ!この教室を、この惨状を!」

「神崎が何をしたかは知らないがこれはやり過ぎだ!」

「バカ言ってんじゃねぇ、このくらいしねぇと俺の気が済まねぇんだ」

「…つまりは貴方の憂さ晴らしってこと?そのせいで勇也はこんな目に?」

「…邪魔だったんだよ、こんな機械風情に同情なんかしやがってよ。バカだったんだよそいつは」

「…っふざけんじゃないわよ!そんなことのためにっ」

「黙りやがれ!お前らは分かってねぇんだよ!この世界は誰のものかを!」

「だからそんなやつに肩入れできるんだ、そんな脇役に」

「…」

「じゃあな、楽しみだぜ、明日から」

「おっ、おい待てよ!」

亀井はそのまま姿を消した。

「…理解できないわ、その考え」

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