第21話

今日は夏休み最終日。

予定にある通り、最終日ということで街でお祭りが行われる。 「はぁー…もう夏休みも終わりか」

夏休み中のいろいろな出来事を思い出す。

海に行ったり、危険な輩と出会ったりもしたが、やっぱり花蓮と付き合うことになったのが1番の思い出だ。

付き合いこそ短いが、俺は花蓮をとても大事にしている。

そんな花蓮だが、今は妹の結衣とテレビでゲームしている。

「こっ、こんのぉっ!」

「ふっ…甘いですよっ」

「ちょっ!?何してるのよぉっ」

「私に勝とうなんて100年早いです」

「うわーんっ、勇也ぁー」

「なんだよ」

「結衣ちゃんがいじめるー」

「どうして欲しいんだよ…」

「仇取ってきて」

「お前まだ死んでねぇだろ」

「いいから!」

「ふふん、私は別に構いませんよ?相手が誰であろうと負けません」

「…はぁ、分かった。コントローラー貸して」

「ふん!結衣ちゃん、アンタはもうおしまいよ!」

「なんでお前が勝ち誇ってんだ…」

どうやら対戦ゲームで結衣にぼろ勝ちされたらしい。

調子に乗りまくっている結衣を倒して欲しいらしいが…

「いいのか、結衣。今なら引き返せるぞ」

「どういう意図かは知りませんが、私は退きませんよ」

「あぁそう」

情けはいらないらしいので、本気モードに入る。

「さぁ、スタートだ」

『READY』

「無駄ですよ…兄さんでは私に勝てな…あれ?」

「……」

「…あ、当たらない、技が」

「……」

「ちょっ、ちょろちょろと!大人しくしてください!」

「……」

痺れを切らした結衣が突撃してくる。

あまりにも無防備だったので避けて反撃を食らわす。

「わぁー!や、やめてください!」

しかし俺は攻撃をやめない。

どんどんコンボを繋げていく。

「こっ、これは…抜け出せないっ!?」

結衣が一生懸命にコントローラーをガチャガチャと言わすが、全て無駄である。

「に、兄さぁん」

「……」

結衣が悲しそうな目でこちらを見るが、時すでに遅し。

俺はフィニッシュを決める。

『K.O!』

「あ……あ……」

「…さて、何か言うことは」

「…ご、ごめんなさい(泣)」

「あっはははは!ざまぁ無いわね!結衣ちゃん!」

「…ぐぬぬ、うるさいですよ!兄さんに頼まなきゃ勝てないくせに!」

「なっ!う、うるさいわね!」

ギャーギャーと騒ぎ出す2人を尻目に、外の様子を見る。

祭りということもあって、まだ朝9時なのにも関わらず既に準備が始まっている。

「これは、楽しみだな」

だが、ある会話を思い出す。

『お前は二学期に入った瞬間終わりだぜ、神崎』

終業式が終わった日の帰り道で出会った亀井の言葉を思い出す。結局あれから亀井を見ることは無かったが、あいつは夏休み中一体何をしていたんだろう。

「…何が待ち受けているんだ」

亀井が何をするかは検討がつかない。ただ、結衣や花蓮、陽介達にも被害が及ぶようならば、俺は亀井を絶対に許さない。あいつの目的は川瀬さんだからそういうことはなさそうだが…警戒することに越したことはないだろう。

などと、考え事をしていると、

「ちょっと、聞いてる?勇也」

「ん?あぁ、なんだ?」

「今夜の夏祭り花火大会、行くでしょ?」

「あぁもちろんだ。一緒に行くか?」

「当たり前よ!」

今はただ、目の前の幸せに向き合った方がいいだろう。

亀井のことはその後だ。

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