第20話

「勇也、今日は楽しかったわ。ありがと!」

「そりゃよかったよ」

1日を終え、俺たちは感想を言う。

こういった経験は前世では無かったので、非常に新鮮だった。さて、時刻は7時頃。そろそろ暗くなるし帰ろうとした時、妙な男共に絡まれた。

「おいおいおい、兄ちゃんよぉ。随分可愛い子連れてるじゃねぇか」

「…何ですか」

「へへへ…気に入ったぜ。その子置いてけよ」

「はぁ?いきなり何言って」

瞬間、横の男からストレートが飛んでくる。

「うわっ!な、なんのつもりだ!」

何とか避ける。

「てめぇ、俺らに逆らうとはいい度胸してるな」

こいつら、海で会ったやつらよりも凶暴だ。

後ろを見ると花蓮が怯えている。

「後ろの女を俺たちに渡せばいいんだ、そうすりゃ怪我なしで帰してやる」

「何かの冗談か?笑えないぞ」

「…」

また拳が飛んでくる。が、避けるのは容易い。

「暴力に物言わせようとしてもそうは行かんぞ」

「……チッ、このガキ」

「あぁ、そうかい。ならもう殺す」

どうやら怒らせてしまったようだ。彼らが戦闘態勢に入る。

「ちょ、ちょっと勇也!マズイんじゃないの!?早く逃げましょう!」

「大丈夫、離れて警察呼んで」

「…え?」

花蓮を下がらせ、こちらも戦闘態勢に入る。

「ガキが…1人でやるつもりか」

「護身術は学んでいる。あんたら2人、楽勝だ」

「調子に乗ってんじゃ…ねぇ!」

1人が拳を突き出しながらこちらへ向かってくる。

…この程度なら何とかやれそうだ。

拳を受け止め、そのまま腕を掴み後ろに背負い投げる。

「なっ…このっ」

もう1人が焦燥に駆られたのか、慌てたようにこちらに走ってくる。飛んできた蹴りを躱し、無防備の腹に掌底を一発。

そのまま蹲ってしまった。

「ぐぅ…このガキがァァ!!」

最初の1人が起き上がり、再度こちらに向かってくる。

力任せの殴りを躱す。少し煽ってみる。

「ほらほらどうした、当ててみろよ」

効果てきめん、顔を真っ赤にし〇ョ〇ョが如く、連続でパンチを繰り出してくる。

「このっ、このっ、死ねやぁ!」

だが当たらず、思わず息を切らす。隙ができたので股間に蹴りを1発。……動かなくなってしまった。

「勇也!」

「花蓮?危ないから離れてろって…」

「警察!警察呼んだから」

「あ、どうも」

後は待っていれば事は済みそうだ。



しばらく待っているとサイレンが聞こえてきた。

どうやら警察が来たようだ。ほっと胸を撫で下ろす。が、

「…隙だらけだぁ!ガキィィィィ!!!」

不意打ちを喰らいそうになる。しかし、

「はーいそこまでね、大人しくしてもらうよ」

ギリギリのところで警察が間に入り男の腕を掴む。

「なっ、警察!?」

「ちょっと署で話聞かせてもらおうかな」

「…あぁっクソォォォ!!!」

男と倒れていたもう1人の男はパトカーに連れていかれた。

「…はぁ、良かったぁー」

「…ねぇ勇也、怪我してない?」

「あぁ、大丈夫だよ」

「すごいわね、大人2人を相手に」

「まぁちょっとね、鍛えてますし」

ふふっ、と2人で笑いが零れる。

「今日はもう帰ろう、結衣が心配してる」

「今日もお邪魔していいかしら?」

「どうぞ」

「やった、ありがと」

こうして波乱万丈な1日が終わった。

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