第16話

目が覚めたが、結局ご飯は食べれてなかったから花蓮にカップ麺を用意してもらった。

「悪いな」

「いいのよ、このくらい」

謝礼を入れ、麺をすする。

あぁ…

花蓮には悪いが数時間前に食べたダークマターより何倍もうまい。ただのカップ麺をここまでおいしく感じたのは初めてだ。

素早く麺を平らげる。満足した様子の俺を見て、

「ふふっ、そこまでお腹すいてたの?」

「まぁちょっと」

「でも確かに、今日のご飯はおいしくなかったかもね」

「?」

花蓮の言葉に疑念を感じる。

「勇也が倒れちゃった後、急いで残ってたご飯を食べようとしたけど、私と結衣ちゃんじゃ食べきれなかったのよ」

「ほう」

「それで、陽介くんの家が近いっていうから、お裾分けしに行って食べてもらったらね」

「…嫌な予感が」

「そうよ、陽介くんも倒れちゃったの」

「あー…」

何故そんな話をするんだ。俺に機嫌でもとってほしいのか、なんて考えていると、

「いいのよ、昔から料理はあまり得意じゃなかったし」

どうやら完全に見透かされていたらしい。

だが花蓮は顔を悪くしなかった。

「昔、同じような事があってね?大きくなった今ならもしかしたら…って思ったけど、ダメだったわ」

昔からあの腕なのか…と戦慄する。

「だから、やっぱり料理は封印するわ。いつも通り、結衣ちゃんに作ってもらうことにする」

「え?何?毎日食べに来るつもり?」

「ん?あぁ、お金ならちゃんと出すわ」

そういう問題じゃないだろ…と顔をしかめる。

できればそういうことは夏休みの間だけにしてほしいが…

「ずっとはダメだぞ」

「分かってるわよ」

そこはちゃんと分かってるようで安心した。



「む、もう10時か」

風呂を終え、テレビをつけると時刻は10時を過ぎていた。

そろそろ就寝時間だ。花蓮と結衣にそう伝えようと、結衣の部屋に向かう。

コンコン。

「は〜い、どしたー?」

中から花蓮が出てくる。パジャマ姿の花蓮は非常に破壊力があり、思わず理性を失いそうになったが、

「そろそろ寝る時間だぞ」

「あら、もうそんな時間なの?」

「この部屋時計置いてないのか?」

「すいません二人とも…ちゃんと用意しときますね」

「それはいいが…スマホとかは?」

「あ、下ね」

とことん時間を確認するものを用意してない二人に思わずため息が出る。

「まぁまぁ…とりあえずありがとね。

結衣ちゃん、そろそろ布団の用意しましょ」

「はい」

いそいそと布団の用意をする二人に

「じゃ、部屋戻るから。おやすみ」

「はーい」

「おやすみなさい」

とあいさつを交わす。今日は特に疲れた。さっき寝たはずなのにもう眠気がすごいので布団に入ってから眠るのにそう

時間は掛からなかった。



家の中が静まり返り、夜も更ける頃。

時間にしてだいたい深夜二時頃、部屋のドアを開ける音がした。が、俺の目はまだ目覚めなかった。何者かが布団に入ってくる辺りで目が覚める。

「…うぅ、ん?誰…」

目を横に向ける。そこには、

「……!?」

花蓮がいた。

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