第13話

「えっ、い、いいのか?」

「…べっ、別に構わないわよ」

「そうよ、ていうかあれで付き合っていないなんておかしいわ。完全に彼氏が彼女の心配してるような感じで出ていっていたわよ、あなた」

川瀬さんが横から出てくる。

「ま、マジで?そんな心配してたの?俺」

「…ちょっと嬉しかった」

花蓮が顔を赤らめる。ふつくしい……

「ほら、花蓮も満更じゃない顔してるし、それにあなた達もう下の名前で呼び合うくらい仲良いんでしょ?だったら問題ないじゃない」

「そ、そうかもしれないな…」

そういえばいつからか俺と花蓮は下の名前で呼び合っていた。何故かは分からないが、気が付くと俺は「花蓮」、と呼んでいた。もしかしたら俺は、花蓮をすごく身近に感じてたのかもしれない。でも、疑念はあった。

「俺でいいのか、花蓮。

俺はもしかしたらお前の話を聞いて、同情の気持ちだけで花蓮と関わっているのかもしれないんだぞ…」

「……」

「…そうかも知れないけど、私には、勇也がそんな気持ちで私と接してくれているとは思えないの」

「…!」

俺はバカだ。

花蓮はとても真剣な気持ちだった。

覚悟を決め、俺に気持ちを伝えてくれたのに、

それを断ろうと考えるなんて。本当にバカだ。

「…分かった、俺でいいなら」

「…!ほんとっ!?」

「あぁ、ほんとだ」

「や、やったぁ!!ほんとにOKくれるなんて!嬉しい!」

「そ、そんなに喜ぶのか」

「…本当はもっとデートとかしたかったんだけど…

ほら、勇也って顔とか性格とかいいじゃん?その、真緒とか他の人に取られたりしたらどうしようかなって」

「取られるって、俺はお前のものだったか?」

「ち、ちがっ、そういうことじゃないわよ!」

ちょっとヤンデレ味があるし、理由としては少し良くないかもしれないが、本気という気持ちはよく伝わったし、

なんかもう離さないってオーラが見えるので俺は気にしない。

「に、兄さんにとうとう彼女が…」

「今まで出来なかったのに…」

「吹っ飛ばされたいのか2人とも」

「…ふふっ」

「…ははっ」

次第に俺たちの間には笑いが生まれた。



場面は変わりここは、亀井の家。

そして亀井は夏休み中、ずっと家にいた。

「……」

亀井は何も言わない。ただずっと、自身の目的のために作業をしていた。

「……くくっ」

亀井が一人、笑いをこぼす。

「…楽しみだなぁ神崎、お前の願いは絶対叶わねぇ…」

「川瀬を手に入れるのは変わらず俺なんだよ…あんなクソガキじゃねぇ」

「…今頃俺は楽しく過ごせてたんだ。ゲームみたいに」

「なのに…なのに…!」

亀井のイライラは募る。

「あいつさえいなければ…!あの神崎の中のヤツさえいなければ…!」

「何が現実だ、何があいつらを酷い目に合わせないだ」

「ここは俺が主人公なんだ…俺が正しいんだ。

この世界は俺のものなんだ」

亀井の思考はどんどん狂っていく。ゲームよりも、歪む。

「ははは…あっはっはっはっはっはっ!!!!」

亀井の行動は、もう止まらない。止められない。


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