第10話

夏といえば海。

その考えのもと、俺たちは今海に来ている。

数時間前___

「はぁー、暇だな」

夏休みといえど毎日が忙しいわけではない。宿題を早くから終わらせていなければ話は別だが。

そんな俺の電話が鳴る、陽介からだ。

「おぉ陽介、どうした?」

「あ、勇也。あのさ、川瀬さんが皆で海に行かないかって」

海、か。前世でも高校以来行かなくなったが…久しぶりに行ってみるか。

「分かった、俺も行こう。出発はいつだ?」

「明日の朝10時頃に待ち合わせだから、9時30分頃に家を出ればちょうどいいと思うよ」

「了解だ」

翌日。

陽介宅

「陽介ー、準備できたぞー」

俺の声に反応して陽介の家からドタドタと足音が聞こえる。

「あ、勇也、おはよう」

「おはよ」

「おはようございます」

「ん?その声は…」

「私も行きますよ、陽介さん」

「結衣ちゃん!どうしてだい?」

「いやさ、俺明日海行くって言ったらさ、私も行きたいですって」

「海へ行くなら私も連れて行ってください」

「こんな感じで聞く耳持たなくてさ、俺が留守にするからって、そこまで寂しがるとは思わなかったよ」

「違います!そんな理由じゃないです!」

「はははこいつめ」

「…ふふっ、二人とも相変わらず仲良しなんだね」

「当たり前よ」

「もう、いいですから早く行きましょう」

「はいはい、じゃあ行こう」



「お、いたぞ。おーい」

「あら神崎くんに陽介くん、こっちよー」

バス停には既に川瀬さんと花蓮が待っていた。

「おう、待たせたな」

「ううん、私たちも今来たとこよ」

「そっか、よかった」

「うん?神崎くん、後ろの子は…」

「あ、初めまして。神崎結衣です」

「神崎…あ、妹ね」

「そう、俺の世界一可愛い妹だ」

「あー…そうなの」

「やめろ、そんな目で見るな」

「冗談よ、これで全員?」

「そうだな」

「分かったわ、じゃあ出発しましょう」



そんな感じで今に至る。

海…海でのイベントはゲームにもある。本来であればここに結衣と陽介に花蓮達はいなく、神崎と亀井だけだったんだが…いい感じにシナリオがぶっ壊れているな。

正直ゲームでの海のイベントシーンにはそこまで大したものはなかったが、このメンバーならきっとそんなことはないだろう。

「…勇也、考え事?」

「ん?あぁ、別に」

「そう?心配不要だったかしら」

「悪い、緊張してるのかもな」

「へぇ、勇也も緊張することあるのね」

「俺を何だと思ってるんだ」

「うーん…年の割には落ち着いたやつ、かしら」

うおっ、こいつ結構鋭いな。

「んなことねーよ、ちょっと大人しい性格なだけだ」

そんな他愛ない会話をしていると、バスが止まる。どうやら海に着いたようだ。

俺たちはバスから降りる。

「わぁ!綺麗ね!」

花蓮が子供のようにはしゃぐ。

「まるで子供みたいだぞ、今のお前」

「今日くらいはしゃいだって誰も文句言わないわ!早く行きましょ!」

「まったく…俺も行くから待ってくれー!」

いい思い出になりそうだ。

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