第9話

「べ、別に大した意味は…」

「じゃあなんで俺の部屋に花蓮は布団を敷いているんだ…

結衣の部屋に敷けと言ったろう?」

「…あ、あなたの部屋の方が良かったのよ!文句ある!?」

「うぇえぁぇ!?!?!?」

思わず変な声が出た。多分二度と出ることは無いだろう。

「別にいっしょの部屋で寝るくらい構わないでしょ!」

「ふぇぇ!?」

結衣が俺の部屋に入ってきた途端そんな声を出した。

「あっ、すいませんお取り込み中でしたか…失礼しまーす」

「違うんだ結衣、話を聞いてくれ」

「大丈夫です、私花蓮さんになら兄さん任せられます」

「だからほんとに違うんだって」

「頑張ってくださいねほんと」

「ちょ待っt」

そう言って結衣が部屋から出ていく。

部屋にはただ静寂が残る。

「…どーしてくれるんだこの状況」

「し、知らないわよ、早く寝ましょう。もう10時よ」

「…分かった分かった、もう寝ようそうしよう」

まったく…前までは陽介に夢中だったのに…

女子というのは気が変わるのが早いんだろうか?

「じゃあ電気切るぞー、おやすみ」

「うん…」




「…う〜ん、むにゃ…」

なんだ…なんか背中に…

「…!」

花蓮が布団に入ってきた。

マジで来ちゃったよどうしよう。

こういう展開は漫画や小説などでよくあるが…実体験できるとは思わなかった。

「勇也…」

「…」

「あんただけは…信じてるから…」

「…」

…あんただけは信じてる、か。

過去にどんな経験したんだ、いったい。

どれだけ川瀬さんに取られたんだよ…

まぁでも俺は女性が悲しむようなことはしない主義だ。

川瀬さんに惚れないと決めた以上、惚れることは絶対ないのだ。言っとくが振りじゃないぞ。

そして夜が明けた…



「…ん、うーん」

「お、起きたか」

「あ、勇也…おはよう」

「おはよう、花蓮。結衣が朝飯作ってくれてるから、布団片付けたら下いくぞ」

「うん、分かった…」

「…何もしてないわよね」

「何もしてない…と言いたいが手が出そうではあったな」

「なっ」

「なんかゴソゴソ音がするなと思ったらお前が俺の布団の中に入ってくるからな。誘っているのかと思ったぞ」

「〜っ///!ち、違うわよっ!バカ!」

「じゃああれはいったい何だったんだ〜」

「うるさい!さっさと下行く!」

「はいはーい」

布団を片付け、俺たちは1階へ降りる。

「あ、兄さん…昨日は楽しめましたか…?」

「特に」

「あっ…そうですか」

「大丈夫よ結衣ちゃん、私襲ってないわ」

「アッハイ」

「朝ご飯できてるんで食べててくださいね」

「うむ、いただこう」

「いただきまーす」



「うむ、美味だった」

「美味しかったー」

「お皿お下げしますね」

「おう、サンキュ…で、花蓮。宿題が終わったからこれからずっと遊べるわけだが…お前はどうする?」

「ん〜…私はとりあえずはしばらく家にいるかしらね」

「ふーん、俺も多分そんな感じだな」

「あら、しばらく家にいるのね。じゃあたまに遊びに行こうからしら」

「おう、構わんぞ」



「じゃ、私帰るわ。昨日はほんとありがと」

「気にすんな」

「あれくらい大丈夫ですよ」

「ふふっ、じゃあまたね」

「おう」

「はい、お気をつけて」



「…さぁ結衣、また2人っきりだぞ」

「…フッフッフ」

「…な、なんだ」

「兄さん、私用事があるので」

「な、なに…まさか」

「あ、男性関係ではないですよ。友達と遊びに行くだけです」

「じゃあいいが…」

「残念でしたね」

「ほんとだよ…」

「帰ってきたら死ぬほど構ってあげますから」

「うん分かったいってらっしゃい」

「…」

…そんな目で見るな。

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