第8話

「さぁ、今日から夏休みだ。が、まずは宿題をするぞ」

めいっぱい遊ぶために、まずは宿題をしようと俺は花蓮に俺の家にきてもらった。

「何が悲しくて初日から宿題しなきゃならないのよ」

「お前みたいなタイプの人間は宿題を最後まで面倒くさがるからな。あらかじめ終わらせておくぞ」

文句は言いつつも、ちゃんと宿題に向き合ってくれている。

根は素直なのかもしれない。

「失礼しまーす、お茶持ってきましたよ」

結衣が下からやってくる。

「おう、サンキュ」

「ありがとうね、結衣ちゃん」

「いえいえ」

結衣も花蓮と仲良くなってくれたそうでよかった。

「ねぇ、結衣ちゃん。コイツに言ってよ、夏休み初日から宿題する意味なんかないわよって」

「ダメです花蓮さん、こういうのは早めに終わらせて置くのがいいんですよ?」

「…あんたらほんとにそっくりね」

「残念だが結衣は頭ん中じゃ俺第一だからな。他人の言うことなんか聞かないぞ」

「ばっ、ち、違いますよ!私はただ、早めに終わらせておくと後から苦労しなくていいようにって意味で!」

「否定しなくていいんだ…お兄ちゃんには分かるぞ。結衣の本心が」

「…あんた、ちょっとキモイわよ」

「はぁ…とにかく、私は下に戻りますよ」

結衣が下に戻っていく。

「大丈夫だ、その気になればこんなもの一日で終わる。

俺も手伝うよ」

「…まぁ、頑張ってみるわ」

こうして、花蓮の壮絶な一日が始まる。



「…む、もう昼か。花蓮、そろそろ下に降りるぞ」

「…あぇ?」

「…根気詰めすぎだ、意識をしっかり保て」

「…はっ!私はいったい…」

「なんで集中しすぎるとそうなるんだよ」

「あんまり長い時間机に向かったことないのよ」

「そうかい、もう昼だ。結衣が昼飯用意してくれてると思うから下行くぞ」

「えっ?いいの?」

「別に構わんぞ」

「えへへ、ありがと」


「あ、兄さん、花蓮さん。丁度ご飯できましたよ」

「うむ、ナイスタイミングだな」

「わぁ…おいしそう」

「今日は午後も頑張ってもらうためにも、スタミナ料理を作りましたよ」

「道理でニンニク臭いわけだ」

「食べた後はハミガキしてくださいね」

「ま、待ちきれないわ!いただきまーす!」

「はい、どうぞ」

相当腹が減っていたらしい。結衣の料理をすんごい速度で口の中へ運んでいく。

「おいひい、おいひい!」

「すっげぇ食べっぷり、そんな腹減ってたのか…」

「もう…そんなに急いでも料理は逃げませんよ。

ほら、お水です」

「あ、ありがと!むしゃむしゃ…」

「さて、俺もいただこうか」



「ふぅーっ、もう食べられないわー」

「ごちそうさま」

「ふふっ…どうでした花蓮さん、美味しかったですか?」

「ええ!文句なし、100点よ!」

「もう、花蓮さんたら」

「サスガダァ」



「さて、ハミガキもしたし」

「…!ま、待って!少し休憩しましょ!」

「あ?」

「た、食べたばっかりだから動けないのよ」

「あんなに食べてたらな」

「だから、もうちょっとだけ、ね?」

「…30分だけだぞ」

「やった!感謝するわ!」

「まったく…」



「では、宿題を再開するぞ」

「はーい…」

「ほら、元気出せよ。頑張れば3時にはおやつが出るぞ」

「ほんと!?じゃあ頑張るわ!」

なるほど、こいつは食うのが好きらしい。

今後からは食べ物で釣るか…


そして夜…


「お…お…お…」

「終わったわぁーーー!!」

「お疲れ様」

「はぁー」

花蓮が俺の布団に倒れる。

相当疲れてたらしい、もう動く様子がない。

「よかったな花蓮、これでもう心配することはなにもない」

「よかったわ…私、できたのね…」

「あぁ、正直驚いてる。まさか一日で終わるとは思ってなかった。お前やればできるじゃん」

「…そうよ、私やればできるじゃない」

「そうだ、ぜひこの調子を続けて…」

どんがらがっしゃーん!!!

「わわっ!な、何!?」

ドタドタドタッ

「大変です兄さん!」

「ど、どうした結衣。そんな慌てて」

「た、台風が接近していたそうで、しばらくは大雨だって」

「な、なんですとー!?!?」

まさかまさかの夏に台風とは…

どうなってるんだまったく。

「…仕方ない、今日は泊まってけ」

「えっ!?いいの?」

「こんな天候なのに泊まらせないバカいるか」

「あ、ありがとう…」

「結衣、花蓮に敷き布団用意してやれ、で花蓮。結衣から布団貰ったらそれを結衣の部屋に敷いとけ」

「え?どこ行くの?」

「少し様子見てくる」

「ちょっ、危ないわよ!」

「大丈夫だって、ちょっと見るだけだから」



外は大雨、雷も降り止まない。

おまけに風も超強いと来た。やばいな…

「まぁこんなもんか」

風と雨を体に受け家に戻る。恐らく明日の朝には止んでいるだろう。

「あ、戻ってきた…って、ずぶ濡れじゃないですか!」

「大したことないよ、ちょっと風呂入ってくる」

「あぁ、そうですk…」

玄関で待っていた結衣に手を振り、風呂場に行く。

「…あっ!待って!今お風呂には!」

何か聞こえた気がするが…とりあえず風呂のドアを開く。

「…えっ」

「あ…」

…最悪だ。

「……っ出てってぇーー!!」

俺は逃げるようにリビングへと走った。

「…兄さん、ごめんなさい、私がちゃんと伝えてれば」

「…いいよ、ちゃんと確認しなかった俺も悪いし」



「…」

花蓮が風呂から出てくる。

「…えーと、さっきはすまんかった」

「…別に気にしてないわ」

「…そうか」

「じゃあ、風呂入ってくる」

「えぇ」



「ふぅーっ」

風呂から出てきた俺は自室へ戻った。しかし、

「…は?」

何故か花蓮は俺の部屋に布団を敷いていた。

「…」

「…どういうつもりかな」

どうして俺の部屋に布団を敷いたのか、俺は花蓮を問い詰める。

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