第7話

さて、今日は終業式。

結局亀井からの行動は何も無く、なんの心配もなく一学期を終えた。本来であれば、陽介は既に精神的にやばい状態であるはずなんだが…今横にいる陽介はとても元気そうだ。

「明日から夏休みだねぇ勇也」

「そんな楽しみか?」

「そりゃもちろんさ!色々予定を考えてるけど、何からしようかな〜って」

「まぁ夏休みを前に楽しみな気持ちは分かるが…あれどうするのさ」

俺は前方に現れた人物に指を指す。

「あれ呼ばわりとは失礼ね、神崎くん。もちろん私も混ぜてもらうわよ!陽介くん」

突如現れた川瀬さんが陽介の方をじろりと見る。

いきなりなんなんだアンタ一体。

「あぁ…はい」

どうやら俺と一緒に過ごすことしか考えてなかったらしい。絶望に満ちた顔をしている。

「ちょっと!私を忘れて貰っちゃ困るわよ」

横から花蓮も出てきた。

「陽介、大人しく従っておこう。それに数は多い方がきっといい。俺たち二人だけじゃ多分寂しいよ」

「…分かった、夏休みは四人で過ごそうか」

陽介も納得したようで二人の誘いを承諾した。

「ふふ…じゃあ放課後にファミレス集合よ。そこで夏休みの予定を立てるわよ」

「うん、分かった」

「了解」

「いいわよ」

そんなことを話しながら、俺たちは体育館へ向かった。



体育館で校長の長い話を聞いた後、俺たちは教室へ戻り担任からの夏休みの間の諸注意を聞いて、学校を後にした。



「集まったわね、それじゃ予定を立てていくわよ」

「おう、そのために夏休み中の行事予定調べてきたぞ」

「あら、気が利くじゃない。ありがと♡」

「へいへい」

「…」

川瀬さんの目から♡が飛んできたように見えるが…

問題ない、と伝わるように花蓮の方を見る。

「…!」

伝わってくれたようでニッコニコになった、ぐうかわ。

そんなに心配しなくとも、そもそも川瀬さんは俺の好みの人ではないのだ。もっとこう…お淑やかで…言わば妹のような…ってそんなことはどうでも良くて、

「ふむ…祭りに花火大会にプール開き…どれも楽しそうね」

川瀬さんが行事予定を一瞥する。

で、なんやかんやあって予定立ては順調に進んで行った。

「こんな感じかしらね…皆もこれでいい?」

「問題ないよ」

「NO problem.」

「え?なんて?…あ、私も構わないわ」

「分かったわ、じゃあこれで決まりね」

夏休みの予定表が完成した。

「楽しむのも良いが…宿題はちゃんと終わらせとけよ」

「大丈夫よ、あの程度の課題、すぐ終わるわ」

「早めの内に終わらせられるといいね、川瀬さん」

「お前はどうだ?花蓮」

「も、もちろん問題ないわよ」

「…目が泳いでるぞ」

「だ、大丈夫よ、最終日に追い込めばきっと間に合うわ」

「そんなこと言って間に合わなかったヤツを俺は沢山知ってるんだが」

「う、うるさいわね!夏休みくらいいっぱい楽しんだって構わないでしょ!」

「それで始業式当日に担任に怒られても知らんぞ」

「だーっ!宿題なんか知らないわよっ!」

花蓮が立ち上がり帰ろうとする。

「あっ、おい待てよ!俺が手伝ってやるからさ!」

そう言って花蓮を追いかける。

「あ、これお代だから、払っといて」

「勇也…うん」

「…」

「…花蓮、神崎くんと仲良くなってたわね」

「…とうとう勇也にも春が来たよ…」

「陽介くん?」



「お前実は勉強できなかったのか」

「…うるさいわね」

「テストどうだったんだ?え?」

「何よ!聞かなくても分かるでしょ!バカ!」

「ははははは!たしかに!」

花蓮をからかいながら、俺たちは帰り道を共にする。

「ふ、ふん。そういう神崎くんはどうなのよ?」

「聞きたいか」

「えぇ聞きたいわ」

「…全部90点台だ」

「…な、な」

「褒めていいんだぞ」

「くっ…褒めないわよ!」

「え〜?ひどぉい…」

「…やるじゃない」

「当たり前よォ!」

これでも前世じゃ割といい方の大学に通っていた。

だから勉強のほうは自信がある。

「いい機会だ、夏休みだし俺が勉強を教えてやるよ」

「ぬぬぬ…いらぬお世話よ!」

「良いのかぁ、断って」

「うぐぐぐぐ…」

そんな会話をしていると、前からある人物が現れる。

「…?あいつは…」

「…奇遇だな」

…面倒だ。亀井と出会ってしまった。

「…ん?見たことねぇ女だな」

どうやら亀井も花蓮のことは知らないらしい。

「亀井…くんよね?何してたの?」

「…ふっふっふっ、別に大したことじゃねぇよ」

「…お前、何か企んでるな」

「あぁ、ご名答」

「お前は二学期に入った瞬間終わりだぜ、神崎」

「はぁ?神崎くんが終わりって…どういうこと?」

「気にすることはねぇ…どうせすぐ忘れる」

「…ちょっと何言ってるか分かんないわよあんた」

「…じゃあな」

「…」

亀井は不敵な笑みを浮かべながらこの場を去っていった。

「何よあいつ!キモイわね!」

「…そうだなぁ、もう会いたくない」

「早く帰りましょ」

「おう」

お前は二学期で終わり、か…

何するつもりだ、亀井。

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