第6話
「ウオオオオオオアアアアァァァァァ!!!!」
カキーン!
真夏の暑い午後の授業…
俺は体育でソフトボールを打っていた。
昨日あんなことがあったからか、今日の俺は少しやけくそになっていたりする。
「俺だって…俺だって!」
そんな俺の様子をクラスメイト達が見る。
「おい見ろよ、あの気迫」
「すげぇよな、小中のとき野球やってたのか?」
「ぜひ野球部入って欲しいよな」
残念だが…今の俺を動かしているのはただの妬みだ。
何か才能があったというわけではないので、野球部に入っても活躍はできない…ってそんなことはどうでも良くて、
亀井はあれからしばらく来なくなった。
たまに顔を出すこともあるがそれでも一週間に二回ほどだ。
何があったかは知らないが、警戒はしていた方が良いだろう。
それはそうとして…そろそろ夏休みが始まろうとしている。
時間が経つのは非常に早く、まだ四月頃だろうと思っていた俺に衝撃を走らせる。
午後の授業が終わり、放課後になる。
「勇也、一緒に帰ろうよ」
陽介が俺を誘う…がしかし、
「ダメよ陽介くん、あなたは私と帰るの」
川瀬さんが後ろから現れる。
あれからすっかり仲良くなったようで、今じゃ俺と陽介の関係を引き裂く程にまで来ている。
「か、川瀬さん…ちょっと今日は」
「…ダメ?(きゅるる〜ん)」
川瀬さんが上目遣いで陽介を見る。
出たぞ、川瀬真緒三大奥義の一つ、「超上目遣い」。
整った彼女の顔から放たれる上目遣いは俺を含めたプレイヤー達が揃ってぶっ倒れるほどだ。
あまりにもこのシーンに気合いを入れていたため、一瞬別のゲームをしているんじゃないかと錯覚するほどだが…
まさか生で見れるとは思わなかった。
さすがの陽介もこれには敵わないらしく、
「わ、分かったよ…」
と渋々帰って行った。どんまい。
それからしばらくして華山さんがやってきた。
「たのもー!…ってあれ?陽介くんは?」
「さっき川瀬さんに持ってかれた」
「…そう、じゃ神崎くんでいいわ。一緒に帰りましょ」
「え?俺?」
予想外の返答に少し驚く。
ゲームでは見かけない人だったのでどのような行動を起こすのか見当もつかないのだ。
「何よ、嫌なの?」
「…あぁ、いやいや滅相もない、ぜひお供します」
「何その喋り方…まぁいいわ」
帰り道、俺は華山さんと一緒の道を歩いていた。
「華山さんもこの辺りに住んでるのか?」
「そうよ、もちろん真緒も一緒よ」
「それは別にどうでもいいんだが…」
「ふぅーん…」
「…」
「…あのさ、話聞いてくれない?」
「…いいよ」
華山さんは俺に過去の話をしてくれた。
「私と真緒は小さい頃から一緒って前言ったよね。
…私、正直真緒とのいい思い出がないのよ」
「…詳しく聞かせてくれないか」
「…いつも私が好きになった人はことごとく真緒に持っていかれていたの。彼女の方が、私よりモテていたのよ。私はそれが嫌だった…だから別の中学に行って会わないようにしてた。でも、どうやら同じ高校に進学しちゃってたみたいでさ…また同じことになるんじゃないかなって…」
「…あのさ」
「…ん?」
「俺、川瀬さんに惚れない自信あるよ。
だからさ…その、元気出せよ。いつもみたいに馬鹿みたいにさ」
「…それって告白?私たちまだ2ヶ月程度の付き合いよ?」
「華山さんが言えたことじゃないだろう。2ヶ月であそこまで陽介に急接近してるしさ」
「…それもそうね」
「…分かったわ、神崎くんのこと、信用してるから」
「また今日みたいに相談してくれて構わないからさ、まぁ頑張れよ」
「…えぇ、ありがとう」
「じゃあ、俺家ここだから」
「へぇ…覚えとくわよ」
「別に来ても構わんぞ」
「それはまた今度」
「そうかい」
そう言って俺たちは別れた。そういう別れたじゃないぞ。
帰り道が別だったから別れただけだ。
「ただいまーってうわビックリした、どうした結衣」
「…」
「ゆ、結衣?どうしたんだ?お兄ちゃんなんか悪いことでもしてしまったのか?なら謝るからさ…あの」
「…兄さんさっき女の人と歩いてた」
「…へ?」
「誰なのあの人」
「…なんだそんなことか」
「なんだそんなことって、私は兄さんを心配して、」
「大丈夫、あの人は悪い人じゃないから」
「…ならいいですけど」
「…もしかして嫉妬してたの?」
「…!ち、違いますよっ!」
「も〜っ!結衣ったら、ほんと可愛いんだから〜!」
「に、兄さん!違うんです!兄さぁーん!///」
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