御伽噺

分かりやすいように少しずつ端折るけど、それで満足してね。



あれは、まだ僕らが所謂「地上」で暮らしていた時のこと________


この船に乗っている人は、皆神の力を少しずつ分け与えて貰った者たちなんだ。

今はもう、船の抑制力で力を使えなくしているんだけど……

ああ、僕は例外でね。この仕組みは僕が作ったものだから。


ごめんごめん。昔話に戻ろう。


神の力って、響きだけ聞けばとても良いものに聞こえるよね。

でも、人々は違ったんだ。


「気持ち悪い!」

「俺たちとは違う!」

「失せろ!」


その力は気味悪がられた。

まあ、未知のモノってそういう風に感じてしまうのもしょうがないよね。

って、今は思うんだけど。


毎日毎晩のように聞かされる罵声で、僕たちはだんだんメンタルが弱っていった。


それはエスカレートして、石を投げられたりする始末だった。


あれはよく晴れた綺麗な空の日だった……


ある一人が、自分の銃を持ち出したんだ。

本当は護身用のものだったけど。


お察しの通り。


日々から積もり積もったストレスが。妬みが。爆発したんだ。


彼は、人を撃ち殺した。


するとどうだ、僕たちにも非が生まれた。

今までは一方的だった負の感情が、正当化されたんだ。


全面戦争


僕たち神の力を持つ者と、一般の人々は戦争になった。


神の力を持つ者は少なくて、だんだんと数に押し負けていく。


「逃げよう」


誰か分からない誰かが発した言葉に、皆賛成した。


きっと地上にいればまた、いつか見つかる。

だから空へ。


僕たちは、大きい廃工場に立てこもった。

前線は維持しつつ、中で船を創る。


僕は創造神の力を使えるから、船を創る班の中心にいたよ。


それから1年程かな……

船を創ることに成功した。

みんな神の力を持っていたし、急ぎでやったから早く作り上げることができた。


「みんな!!乗るぞ!!!!!!!!」


空挺に乗って、僕たちは地上を離れた…………


~…~…~…~… ・ …~…~…~…~


「って訳さ。それで、負けに恥じた後継たちが嘘の起源をつくって言い伝え隠したんだ。自分たちの負けが、後に伝わらないようにね」

「負けに恥じる気持ちも分からなくはない……が、歴史を塗り替えるとは、本当に正しいことだったのか…………?」

「ユズラはずっと本当のことを知っていたのだな。何故言おうと思わなかった?」

「だって僕一人が言ったって信じないだろう~?信用度が足りなすぎるよ」

確かに、ユズラ一人が喚いたところで誰も聞く耳を持たないだろう。

人格も人格だ、またヤバい薬でも飲んだんだろうで終わり。

「だが、噂には根元があるはずだ。本当の話ではなく、嘘の噂を流す意味はなんだ?」

「そりゃあ、恥をかきたくないやつじゃあないか?」

「でもその時代に生きていた者はユズラぐらいしかいないのだろう?」

「いや、僕じゃないでしょ。疑いの眼差しやめよ?」


「そうだそういえば…………」

明日の夜に話をしようと誘われた、とそのまま口走るところだった。危ない。流石に安直すぎた。

「ユズラ、個人的な話があるんだが……すまないカミエス、外してくれるか?」

「ああ、外で待っておく」


~…~…~…~… ・ …~…~…~…~




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る