僕の心はブラックホール
「お勤めご苦労様、攻撃隊長のカミエスだ」
「……司令部長のルース、科学センター長への面会に」
「はい、確認致しました。お入りください」
一面白の清潔的な場所だ。
長い廊下を歩いて、角部屋がユズラの部屋だったはず。
「うわ……なんか変な匂いしないか?」
「っ…………、」
反射的に顔を歪ませてしまう程にひどい匂いだ。
「あそこの角部屋からか……?」
部屋の窓が開いている。間違いない。
建付けのあまり良くないドアをガ、ギシッ、と開ける。
「おい、何してるんだ!毎度毎度……勝手に開けるなと言ってるだろう!?」
「はぁ……ユズラ、今度はなにを作っているの?」
「ん?おぉ、ルースじゃないか!見ていない間に背が伸びたな」
「ユズラはいつ見ても変わらないね」
彼はユズラ、科学センター長をしている。よく変なものを作るで有名だ。
過去に不老不死の薬を自分で作って服用したので老けることがない。羨ましいような羨ましくないような。
「今回は掃除機を作っているんだ、その名もブラックホールバキューム!名の通りブラックホールのような吸引力でなんでも吸い込むことができるのさ……最近床が散らかってしょうがないから需要があると思ったんだ、ここのスイッチをオンにして、こことここを繋げると……、ん?回線が間違っているのか?作動しない、あれ……、」
早口でまくしたてられたから内容はほぼ頭に入らなかった。入らなくてもいいけど。
ユズラは掃除機を手にボタンをカチカチしている。
「んあ~、何故だ!分からん!!……お、ついたか!?」
ギュイイイイイ……と大分どぎつい音を出しながら掃除機は起動したようだ。
「……おい、これ放っておいていいのか?」
「話しかけると永遠に語られるぞ」
「はあ……?」
「よおーし!これが僕のブラックホールバキュームだ!わははははは!…………って、うわあああああああああああ!!!???!!!?!?」
「!?っ」
爆音と激しい光が目の前に走る。
「なんだぁ……!?」
目を開けて煙を手で払うと、爆発したとき一番近くにいたであろうユズラは煤まみれになっていた。
斜めにズレた丸メガネを直して、掃除機を見つめている。
「おい、私達まで巻き込むなんて聞いてな」
「うわあああああん!!僕のブラックホールバキュームがあああ!!!!」
「一体なんなんだ、この人……」
~…~…~…~… ・ …~…~…~…~
ユズラは白衣を取り換えにいった。
「お前とユズラさんは初対面ではないのだな」
「ああ……詳しい話は伏せるが、あの人は私の親のようなものだ」
「そうなんだな、道理で話し方も少し似ている」
「そうか?……まぁ、幼い頃から世話になっているし、恩がない訳でもない。度々部屋を爆発させるのはやめてほしいがな」
「はは、楽しそうじゃないか」
開けっ放しのドアからユズラが入ってきた。煤に汚れていた白衣はちゃんと白くなっている。
「ごほん、待たせてしまってすまない。ご用件は?」
「ボスからだ。ポケット転送装置にバグが確認されたそうだが」
「あぁそれ?数ヶ月前に修正したと思うけど」
「ボス、そういうとこあるよな……」
私よりは妬みがなさそうなカミエスさえ頭を抱えている。
「そういえばユズラさんは最近噂を聞かれたりしましたか?」
「え?僕が天才っていう噂?」
「違うだろう…………」
「ちぇ、違うのか。じゃあここが本当の世界じゃないってやつ?」
「……ユズラさんも知ってたんですね」
「ああ、この話にはたまげたよ」
「ユズラさんはこの船の起源、しっかり理解しておられるのか。年は私達と同じぐらいのようにも見えるが……?」
「カミエス、だっけ?君と会うのは初めてだものね。手っ取り早く伝えると、僕は不老だ」
「ふっ、不老!?」
カミエスはよほどビックリしたのか、目を見開いて大声を出した。
「いや、でも、空間転送装置をも作ってしまうようなお方だ、不老であっても訳ない……のか…………??」
「はは、褒めてくれてありがとう。僕は昔、自分で不老の薬を作って飲んだんだ。そしたら成功した」
サラッとヤバいことを言っているような気がする。
「僕はこの船にいる一番年……上……、いや、年は取らないからな……、長住者とでも言おうか。年月だけで言うとザッと200年は生きてるだろうね」
「に、200年!!」
カミエスがまたもや大声を出した。
「カミエス、声がでかい」
「ゔ、っうん。す……すまない」
「まあそういうことだから、この船では一番起源について詳しいと思うよ。それを踏まえて言うけど、あの噂は半分……いや、そもそも君たちが知っている歴史が間違っている」
少し驚いた。私も初耳の話だ。
「地面が壊れ、その不幸を見かねて神がこの船を創造した……訳ではない。ということか?」
「ああ、そうだ。少しもかすっていない。その歴史は、この船の人間が後付けした嘘だよ」
「そうだったのか……、待て。本当の起源は今誰が知っているんだ?」
「今となっては僕しか知らないだろうね。後付けしたのがもう大分前だから…………。今回流れている噂は、後付けした起源だ」
「本当の起源、についてお聞かせ願おうか」
「遠慮なく」
~…~…~…~… ・ …~…~…~…~
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