第34話
ロアの推理は、以下の内容だった。
イルミス国は、ルベール国から多額の資金援助を受けてからというもの“恩”に束縛された状態であり、外務大臣の男はその支配権を持っている。彼は就任後、自国と連絡を取りつつ、イルミス国からひたすらに“恩恵”を受けていた。
そして先日サフィラスがルベール国王と衝突した結果、彼に“サフィラスとリベラの二人を囚えろ”という旨の命令が届いた。だが彼は自身の手を汚すのを嫌い、捨て駒にその役目を押し付けた。昨日の誘拐犯は先鋒であり、先の彼女も同じく、その事実を知らない駒だと。
「……成程、さながら探偵のようだ。それで、キミは如何したい? あの国は、ヒト一人が牙を剥いたところで敵う相手ではないよ」
「そんなの重々承知してるわ。 ……でもね、アタシはこの国から沢山の思い出を貰ってきた。だから、自分の居場所を犠牲にしてでも報いなきゃいけないの」
「一度実行に移せば、後戻りは出来ない。それでもキミは手を下すかい?」
「勿論よ」
「……そうか。ならば私も手を貸そう」
「ふふっ、その言葉を待っていたわ」
そう言うとロアは、テーブルに薄型の四角い機械を置いた。その表面には文字が浮かんでおり、サフィラスは凝視する。
「それは?」
「“反撃の一手”よ。国内に住む全員が持ってる端末に、イルミス国の“真実”を送り付けるの。 ……でもね、この作戦には一つ問題があって。外部から権限を上書きされると、即ゲームオーバー。リベラちゃんを含めた全員が、追われることになるのよ」
「何か対処法は無いのかい?」
「あるわ。ただ、サフィラスちゃんには体を張って貰うことになるけど。 ――さっき話した権限なんだけどね、管理してるのは国王なのよ」
「だが、その傍らには常に大臣がいる。当然、権限においても彼の目があると考えるべきであり――正攻法では、瞬く間に書き換えられてしまう。 ……つまり、私が大臣の妨害を防げば良いということかな」
「ええ。そうすればきっと、この国の皆にアタシ達の訴えが届く。上手くいくとは限らないけど……それでも一つだけ、自信を持って言えることがあるわ。一度世に放たれた情報は記憶となり、永遠に消すことはできないって」
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