第20話 着替えながらの女子トーク
プールで遊ぶ当日。現地集合となり、俺は、家が近い、穂香と拓海と一緒に行くことにした。結衣と理沙は、現地で合流。
目的のプールへ着くと結衣と理沙は先に来ていて、2人は、楽しそうに話していた。
「おはよ、2人とも。じゃ、後で待ち合わせようじゃないか男子達よ。理沙、結衣ちゃん、着替えに行こっ」
穂香は、俺と拓海に向かってひらひらと手を振って女子更衣室に入っていった。
「じゃ、俺達も行くか」
やけに荷物が多そうな拓海に声をかけられ、俺も更衣室へ入ることにした。
***
「結衣ちゃん、結衣ちゃん」
パーカーを脱いで折り畳んでいると結衣は、隣で着替える穂香に声をかけられた。
「隼人。結衣ちゃんと咲愛ちゃんが姉妹だって気付いてなかったらしいね」
「あぁ、うん、そうみたい。私もまさか妹が間宮くんと仲良いとは知らなかったよ」
結衣の話を聞きながら穂香は、「そうなんだ」と言いながらあるところをじっと見ていた。
隣で何の話をしているんだろうと思う理沙も同じく穂香と同じところを見ていた。
「そだ、女子しかいないし、恋ばなしよっ」
穂香がそう言うと結衣を挟んで向こう側にいる理沙が口を開いた。
「恋ばなとか言って、拓海との惚気話でも聞かされるの? 別にいいけど……」
理沙は何度も穂香から惚気話を聞かされているので、少し嫌がっているように見える。
「違うって。理沙と結衣ちゃんの恋愛話だよ。結衣ちゃん、好きな人、いる?」
手をマイクのようにして穂香は、水着に着替える結衣に尋ねる。
理沙も結衣が誰を好きか気になるようで、耳を傾けていた。
「いないよ。恋愛あんまり興味ないし」
男子からモテているから結衣のその言葉には、穂香と理沙は少し驚いていた。
「今まで付き合ってた人とかいないの?」
過去にはいたかもしれないと思い、今度は理沙が、結衣に聞く。
「いるよ。1週間で別れたけど」
「別れた理由とか聞いてもいい?」
「んー、付き合うが何か知りたかったから何となく付き合った感じかな。理沙は? 好きな人いるんでしょ?」
結衣は、まるで好きな人がわかっているかのように理沙に聞いた。
「えっ、わ、私!? 結衣には言ったことないと思うんだけど、いるように見えるの?」
顔を真っ赤にさせて、動揺しまっくった理沙は、結衣に聞く。
「うん、見える。間宮くんでしょ?」
「すっ、凄い。私ってわかりやすいかな?」
「んー、私はすぐにわかったよ。理沙、表情と行動に出やすいタイプっぽいし」
結衣がそう言うと隣にいる穂香は、うんうんと頷いていた。
「恥ずい……」
さらに理沙の顔は真っ赤になり、穂香は、可愛いなぁとお婆ちゃんっぽく言う。
「間宮くんとなるとライバル多そうだね」
「だよね。結衣は、隼人のこと好きじゃないの?」
理沙の質問に結衣は、横を向いて話していたが、前を向いてゆっくりと話す。
「私は……間宮くんとは友達だよ。仲良くなったのも最近だし、異性としては見てないかな」
「……そっか。それより話し変わるけど、結衣って、結構あるよね」
「だよねだよね。二度見しちゃうくらい」
「そう? 私のことはいいから早く行こっ。間宮くんと室伏くんが待ってるし」
そう言って、結衣は、先に更衣室を出ていってしまう。
「あーまってまって。理沙、私、まだ着替えてないんだけど!」
穂香は、ずっと話に参加したり、喋っていたのでまだ服のままだった。
「わかった、わかった。待つよ」
***
「あれ、緋村さんじゃない?」
着替え終えてから女子から連絡が来るまでうろついていると若い大学生らしき人達に囲まれている結衣を拓海が見つけた。
「ほんとだ」
また知り合いじゃないかと思ったが、見た感じ知り合いではないようで、どうみてもナンパだった。
「ねぇ、君。1人なら俺達と遊ぼうよ」
「待ち合わせてるんで無理です」
「待ち合わせ相手は女の子? ならその子達も一緒でいいからさ」
拓海と一緒に結衣のところに近づくと会話が聞こえてきた。
(うん、今回はナンパだ)
「結衣、お待たせ」
俺は、彼女のところへ行って、優しく手を取った。すると、結衣は、安心したような顔をしてこちらを見た。
「遅い……」
ボソッと呟いた結衣は、そう言って俺の腕をぎゅっと抱きしめた。
「なんだ、彼氏いたのかよ」
「行こうぜ」
「だな」
ナンパ集団は、結衣に男がいると知った瞬間、どうでも良くなったのかここから立ち去っていった。
「大丈夫?」
近くにいたが、自分の助けは必要ないと判断した拓海は、遅れて結衣のところに駆け寄り、心配した。
「大丈夫だよ。間宮くんが、彼氏のフリしてくれたら」
拓海にそう言って結衣は、俺の方を向いてニコッと笑った。
「助けてくれてありがと、間宮くん」
「……ど、どういたしまして」
結衣の笑顔にドキッとして照れながらそう言うと隣から拓海がニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「な、なんだよ、こっち見て……」
「いや~、隼人のそういう顔初めて見たからちょっとね。そういや緋村さん、穂香と理沙は?」
拓海の言葉を聞いて、俺は、そういや2人がいないことに気付いた。
「2人なら……あっ、来たよ」
「お待たせ!」
穂香の明るい声が後ろから聞こえて、後ろを振り返ると穂香と理沙が小走りでこちらへ来ていた。
プールサイドは滑りやすい。小走りでも見ている側としては転ばないかとそわそわしてしまう。
「走ったら───おっと、大丈夫?」
目の前で躓き、転びそうになった理沙の手を取り、自分の胸に引き寄せたので、何とか転ばすに済んだ。
心配で目線をしたにやり、自分が咄嗟にこうしたとは言え彼女を抱きしめていることに気付いた。
「ご、ごめん!」
慌てて彼女から離れると理沙は、顔を真っ赤にさせて首を横に振った。
「う、ううん。ちょっとビックリしたけど、はやっちのおかげで転ばずに済んだよ。ありがと」
「うん……」
コクりと頷くと、穂香が皆揃ったからさっそく遊ぼうと言って、スライダーへ移動することになった。
「間宮くん、行くよ」
後ろから結衣に声をかけられた、少しボーッとしていた俺はハッと意識を戻した。
「うん、行こっか」
【第21話 ちょっとだけ触らせてよ】
〈お知らせ〉
書ききることは全く問題ないのですが、毎日投稿じゃおそらくカクヨムコンまでに全話投稿できないことに気付きました。なので、最終話辺りは1日に2話投稿するかもしれません。
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