第14話 私、間宮さんのお嫁さんになりたいです
緋村さんとショッピングモールに行った次の日。午前中は、家でゆっくりし、午後からの約束まで学校から出された夏休みの課題をする。
ちなみに課題はすぐにやるタイプだ。後になってやると困るのは自分だ。嫌なことを済ませて遊ぶ方がいいだろう。
午後の約束というのは、咲愛さんがこの家に遊びに来ることだ。
「お兄ちゃん。咲愛さんは、いつ来るの?」
そう言って勉強していた俺に尋ねてきたのは、妹の
「お昼食べてから来るから1時頃だよ」
「午後からってことか。楽しみだなぁ」
美雨はそう言って、自分の部屋がある2階へと上っていった。
「隼人。お客さんが来るなら少し掃除しましょうか」
今でも十分綺麗だが、お婆ちゃんは、ソファからゆっくりと立ち上がるので俺は慌てて止めた。
「お、お婆ちゃん。俺がやるから無理して動かないで」
前に一度無理して動いたせいで入院ということになったので、無茶はしてほしくない。
「そうかね。じゃあ、隼人が掃除をしているところを見ているよ」
お婆ちゃんは、ゆっくりと腰を下ろしてソファに座り、お茶を飲んだ。
(さて、掃除機はさっきやったから出しっぱなしのものとかを片付けておこう)
謎にお婆ちゃんに監視されながら掃除すること数分。もういいかと思い、自分の部屋に行って、お昼まで勉強することにした。
咲愛さんが来たのはお昼を食べてゆっくりしていた時だった。
「間宮さん、お邪魔します」
ドアを開けると、玄関前にいる天使の笑顔の少女がいて俺は、心打たれた。
(恐るべし、中学生の笑顔)
「どうぞ、入って」
「はい、お邪魔します」
俺がドアを開けて、彼女は家の中に入る。すると、2階から美雨が降りてきた。
「もしかして咲愛さん?」
「うん、そうだよ」
そう言うと美雨は、咲愛さんの目の前まで走ってきて、彼女の手をぎゅっと握った。
「初めまして、妹の美雨です」
「は、はい、初めまして。美雨さん」
美雨のテンションに追い付けていない様子だが、咲愛さんは、美雨に丁寧に挨拶する。
「ちょー可愛いじゃん! お兄ちゃん、付き合ってるの?」
「付き合ってないよ。咲愛さん、歳下だし」
美雨にそう言って、咲愛さんを見るとぷく~と頬を膨らませてこちらを見ていた。
「咲愛さん?」
「むふ~、間宮さんは、歳上が好みなんですか?」
あれ、もしかして、気付かないうちに俺、咲愛さんの機嫌悪くさせてしまってる?
「好みって、別に年齢とか気にしないけど……って、何でこんな質問を?」
咲愛さんにそう尋ねると話を聞いていた美雨は、深いため息をついていた。
「咲愛さん、お兄ちゃん、玄関で話すのもあれだし、中に入ったら? お婆ちゃん、リビングで寝てるし、話すならお兄ちゃんの部屋に行こっ。私、お茶用意するね」
美雨は、キッチンへ行ってしまい、玄関前には俺と咲愛さんの2人になる。
「あ、ありがと。咲愛さん、俺の部屋でもいいかな?」
「間宮さんの部屋……はいっ、行きます!」
本当は、リビングの方がいいと思うけど、お婆ちゃんがいるし、自分の部屋でいいだろう。
2階の自室へ咲愛さんを案内し、中に入れると彼女は、緊張していた。
「男の人の部屋に入るの初めてです。ドキドキします」
ニコッとこちらを見て微笑む咲愛さん。ドキドキしますと言われたらこちらまでドキドキする。
「咲愛さん、美雨のお手伝いに行ってくるね」
「はい、待ってます」
部屋を出て、下の階のキッチンで冷たい麦茶を用意していた美雨のところへ行く。
「あっ、お兄ちゃん。どうぞ」
「ありがとう。美雨も来る?」
「ううん、やめとく」
「そっか。来たいなら来てもいいからな」
美雨は、咲愛さんと話したそうにしていたのは見ていてわかっていたので、後で来てもいいと言って、お盆に乗せた麦茶を持って、部屋に戻った。
ドアを閉めていたので、お盆を片手に持って、ゆっくりと開けると、咲愛さんは、飾っていた家族写真を見ていた。
「咲愛さん?」
「あっ、すみません! 勝手に見てしまって」
彼女は慌てて写真から目を離し、ペコペコと頭を下げた。
「いや、いいよ。はい、麦茶どうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
咲愛さんは、麦茶を両手で受け取ると一口飲んだ。
センターテーブルを挟んだ彼女の向かい側に俺が座る。すると、咲愛さんは、麦茶が入ったコップをテーブルに置いて、口を開いた。
「海、いつ行きましょうか?」
「あーそうだな、そろそろ決めないと。バイトが入ってない日は、何日かあって」
スマホで空いている日をカレンダーを見せるため、彼女の隣へ移動すると、咲愛さんは、嬉しそうに小さく笑った。
「どの日ですか?」
彼女は、俺がいる方へ物凄い近い距離まで近寄ってきた。
(ち、近すぎやしませんかねこれ……)
「こことここと、あとこの日かな。どう?」
もう少し遊べる日があればいいんだけど、友達との予定もいれているのであまり1日フリーの日がない。海に行くなら1日何もない日がいいだろう。
「あっ、この日なら大丈夫です。お姉ちゃんもバイトありませんし」
「そっか、なら、この日に」
「はい。お姉ちゃんにも伝えておきます」
日程が決まり、カレンダーに『咲愛さんと海』と打ち込んでいると、咲愛さんが、肩にもたれ掛かってきた。
(咲愛さん……?)
「そう言えば、咲愛さん。好きな人にクッキーは渡せた?」
「はい、渡せました。美味しいと言ってもらえたのでまた作る予定です」
(わかるわかる。咲愛さんのクッキー、美味しかったしなぁ)
「あの、間宮さん」
肩にもたれかかったまま彼女は俺の名前を呼ぶので俺は、彼女の方を向いた。
「私、間宮さんのお嫁さんになりたいです」
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