第2話
「えーっ!!」
教室中に響き渡る絶叫。
僕の返答を聞いた音無はその大きい瞳をパチクリさせながら言う。
「みーちゃん、今日はどういう風の吹き回し? 私からの誘いを受けるなんて!!」
そんなに驚くなら最初から誘うなよ……。
「いや、やっぱりひとりで食うから別にいいや」
「ちょちょちょ、今のなし! 一緒に食べよ? ね? みーちゃん!」
泣きながら必死に僕の腰を掴んでくる音無を鬱陶しく思いながらも、了承する。
校庭を見渡せるベンチにふたりで座ると、天王寺さんと話すときとは別種の、居心地の悪さのようなものを感じる。
考えてみれば無理やり音無の話を聞かされることは何度もあったが、僕の方からその会話を続けようとしたことはなかったな。
「それでそれで? なにかあったの、みーちゃん?」
「それはもういいだろ」
「よくないよ! みーちゃんの心境の変化は私にも見逃せないことだもん!」
頬をぷーっと膨らませて(あざとい)、疑問を表情に出してくる音無。
俺はそれを内心鬱陶しく思いながら、気になっていたことを聞いてみる。
「音無、おまえ天王寺さんになにかした?」
「へ? 天王寺さん?」
ぽかーんと口を半開きにして反問してくる音無。しばらく反応を待っていると、
「もしかしてみーちゃん、天王寺さんに気があるの?」
と問いかけてくる。
「いや、気があるっていうかなんというか……。なんか天王寺さんがおまえのことを過大評価しているから、なにか原因があるんじゃないかと」
「へー。ほー。ふーん。たしかにみーちゃん、最近天王寺さんとよく話してるもんねー」
いやまて。
話しているのは人目につかない場所ばかりなんだが。
なんでおまえが知ってるの?…という疑問をぶつけるより前に、音無は言う。
「別にー? ただみーちゃんのことをどう思ってるのか聞いてみただけだよ?」
「僕のこと?」
それは天王寺さんの言っていた、『音無が眩しすぎる』という言葉と繋がるのだろうか。
「具体的に、僕のどんなところを話したの?」
そう問いかけると、音無は頬を染めて僕から視線を逸らす。
「いやー、どんなところと言われても…。
普通のことだよ?
みーちゃんのことをどう思ってるのか、これからみーちゃんとどうなりたいのかとか」
その言葉に、僕は心臓を鷲掴みにされたような気分になる。
昨日僕が天王寺さんに聞いてみようと思っていたことを、音無が聞いてしまっている。
僕はその答えをーー。
「でも教えてあげないっ! みーちゃんきっと調子に乗っちゃうから!」
いーっと歯を剥き出しにして怒りを表明してくる音無。
僕はその反応を見て困惑してしまう。
え? つまり? 僕が調子に乗っちゃうってことは…。
「あーっ! みーちゃんエッチなこと考えてる! 最低! ふしだら! 変態!」
「いや、考えてないから…」
ていうか、音無。それ答え言ってるようなものだから…。
場所を変えて屋上。時は放課後。
僕は天王寺さんを呼び出して屋上で待機をしている。
今どき滅多にいない、携帯を持っていない女子である天王寺さんとふたりで話すために、僕は放課後のチャイムがなり次第教室にいる天王寺さんに「屋上で待ってます」とだけ告げて一足早くここに来た。
だが、待っても待っても来ない。
既にこの屋上に到着してから一時間が経過しようかというころ、校舎からこの屋上に続く扉が開いた。
するとそこにはーー。
「なんだ、音無か」
落胆する僕。
しかしそんな僕の、いつもなら音無が憤慨するような言葉を無視して、彼女は言った。
「天王寺さんが、襲われたのーー」
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