第7話初めての依頼

「というわけで来たよ」

 ヨシノちゃんに働けと言われた翌日、俺は傭兵ギルドを訪れた。

 サクラさんがちょうど空いていたので彼女の受付に行く。

「ようやくですか。レイさんはこのギルドの期待の新人なのでみんな待っていたんですよ」

 期待されていたのか。それはなんか悪いことをした気分に、ならないな。うん。さくらさん個人からならともかく、全く知らない傭兵ギルドの職員から期待されてもってなる。赤の他人から向けられる感情には興味がない。

「それに、もう10時を過ぎていますよ」

「10時過ぎてたら悪いの?」

 確かに、少し遅いかも知れないが、前世でも10時出社の仕事だってあったはずだ。そう考えれば特別遅いとはおもはない。それに、起きたのだって9時頃だ。よく10時に来れたと思うね。就活すらしたことないから10時出勤云々は知らないけど。すごいよね、社会人。毎朝9時から8時間の労働。移動を含めると1日の半分近くを会社に奪われているのにそれを当たり前だと思っているんだから。俺には無理だった。考えただけでも気分が悪くなる。

「悪くはありませんが、傭兵としてはかなり遅いですね。みなさん依頼の取り合いでギルドが開く6時には集まっていますから。少しでも遅れると割りのいい依頼は軒並みなくなっていますよ」

 朝の6時ってどう考えてもまだ寝ている時間だ。そんな時間にはもう集まっているなんて。そういえば、花鏡の朝食は5時からだったような。早い時間からやってるなくらいにしか思っていなかったが、そういうことか。

 それに、もしかしなくてもギルドが開くのが6時からだとすると、ギルドの職員はそれよりも早くに来なければいけないということだ。何時まで働いているのかも、どういう仕事形態かもわからないが、考えただけでもゾッとする話だ。

「……サクラさんって何時にここに来ているの?」

「レイさんが考えているほど早くにきていませんよ。前日に翌日の支度を済ませてあるので10分ほど前に来て簡単な掃除と最終確認をするだけですので」

「そうですか。お疲れ様です。あ、話は変わるんですけど、とりあえず今日は働こうと思いまして、今ある中で何かおすすめの依頼ってありますか?できれば近場で」

「そうですね、これ以上の会話は非効率的ですね。少々お待ちください」

 そう言って掲示板を少し眺めたサクラさんは一枚の紙を持って戻ってきた。

「これを見てください」

 提示された紙を見る。

 ええと、ヴェーアヴォルフが北の目撃されたのでこれを確認後討伐してください。報酬は120ゴールド。30ポイント。ヴェーアヴォルフがどう言った魔物かはわからないが、名前的におそらく狼系の魔物だろう。見た感じそこまで難しいとは思わないけど。残っているということはなかなかに厄介なんだろう。

「どういう意図でこれを?」

「レイさんが討伐した盗賊、実は結構なの知れた盗賊だったのです」

「はあ、それで?」

「ヴェーアヴォルフですが、言ってしまえば二足歩行の狼型の魔物なんです。しかし、知能が高いため単体であったとしてもなかなか手強いです。ですが、あの盗賊を討伐することができるレイさんなら問題ないかと。それに、この依頼を達成するとちょうど等級が3まで上がります」

「それが狙いか」

 どことなく面倒そうな気がしないでもないが、あの盗賊よりも簡単ならいいか。

「うん。その依頼、受けるよ」

「かしこまりました。それでは、こちら受理しておきますね。気をつけて行ってください」

「はーい」

 さて、初仕事頑張りますか。

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