第6話花鏡

「いらっしゃいませ」

 花鏡に着くとカウンターから可愛らしい声が飛んできた。俺にこの宿を教えてくれたギルドの受付嬢を幼くしたような見た目をしているので妹あたりだろうか。娘だったら俺が泣く。

「一泊いくら?」

「5000シルバで朝夜の食事付きです」

 受付の彼女も言っていたが、確かに相場を考えると少し高い。この条件だとだいたい3から4千くらい。

 シルバは通貨単位で、10000シルバで1ゴールドになる。シルバ、ゴールドにはそれぞれ10刻みで4種類ずつあるので、前世と似た感覚で使える。

 4種類平等に出回るシルバと違い、ゴールドの方は、1ゴールド硬貨が基本的に出回っている。10ゴールド硬貨以上は普通に暮らしていく分には使うことはない。高級店や家、俺たち傭兵でいえば武器防具くらいでしか使うことはない。盗賊討伐の報酬が金貨でぎっしり詰まっていたのはそれが理由だろう。もう少し等級が上がれば10ゴールド硬貨以上の硬貨で支払われるようになるだろう。

「とりあえず10日でお願いします」

「5ゴールドです。お名前を伺ってもよろしいですか?」

「レイです」

「レイさんですね」

 盗賊討伐で得た報酬から5枚の硬貨を取り出して少女に渡す。

「はい。ちょうどいただきました。それではお部屋に案内しますね」

 カウンターから出た少女に連れられて階段を上がる。突き当たりの角部屋に案内される。

「こちらです。夕食は19時から23時までで、朝食は5時から10時までです。食べなかった場合でも料金は変わらないのでぜひ食べにきてくださいね」

 可愛い。それに、やっぱり似ている。

「もしかして、傭兵ギルドの受付に親戚はいる?」

「はい。お姉ちゃんを知っているんですね。傭兵さんですか?」

「そうだよ。今日なったところ。サクラさんだっけ?たまたま受付で対応されて」

 名札を思い出して答える。顔ばかり見ていたので名前を覚えているかは怪しかったが、どうやら胸も見ていたようだ。

「そうなんだ。これから頑張ってね」

「怪我しない程度に頑張るよ」

 めっちゃ可愛い。もうちょー頑張る。でもしばらくはサボる。

「そうだね。怪我しないでいっぱい稼いでね」

 おおう。すごい強か。こういうところは姉に似ている。

「うん。そういえば名前聞いてなかった。教えてもらってもいい?」

「ヨシノだよ。よろしくね。レイさん」

 永泊するわ。

 

 花鏡にきて10日。まだサボっている。

「レイさん。いい加減働きなよ」

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