第10話 検査結果
検査結果を聞きに外来へ。
お腹が苦しいのが解決するといいなぁ。
痛いのなくなるといいなぁ。
もう少しご飯を美味しく食べたいなぁ。
「胃カメラは異常なし。それと嚢胞に出血の跡があった」
「え? 腎臓ですか? 肝臓ですか?」
「腎臓」
尿が赤いことなんてなかった。痛いのいつもだし、全然気づかなかった。そんなことまでわかっちゃうMRIすごいな。
というか、いつだ? いつ出血したのだろう。もしかして受診のきっかけになった10月の時?? まぁ今は出血してないなら問題ないか。それよりも……
「食べられないのと痛みの原因は……」
「嚢胞が押してるね。それと腎容積がサムスカの要件に入っているから、増大率によっては来年あたりサムスカ導入かなぁ」
サムスカ――トルバプタン。元々は心不全の薬。その利尿作用が嚢胞の増大進行を抑制させるということで、保険適応になってる唯一の薬。
現在、多発性嚢胞腎を治す薬は存在しない(創薬の研究は行われている)。この薬を使うのは、末期腎不全になるのを先延ばしするだけ。
さらに使うのに条件があって、その一つが総腎容積750㏄以上で嚢胞増大率おおむね5%/年以上。
それって間違いなく指定難病のヤツじゃん。
「サムスカ導入になると、指定難病の医療費の補助がうけられるから、医療費の負担が軽くなるよ」
えぇ……急には進行しないタイプだから、心配しなくていいって、去年言ってたじゃーん。経過観察って言ってたのにぃ……
MRIの結果をもとに、S先生はこの医療センターで出来ることを調べてくれてて、放射線科の先生が嚢胞を穿刺して貯留液を抜いてくれるのを引き受けてくれたとのこと。
放射線科の先生でも出来る人は少ないのだそうだ。
ネットで調べると、わりと一般的かつ簡単そうな感じで書いてあるのに。
開窓術という腹腔鏡で嚢胞を開く外科治療もあるけど、この病院の外科の先生たちはガンが専門で多発性嚢胞に対応できないだろうとのこと。(単発の巨大嚢胞は過去の手術リストにあった)
「上腹部と心窩部の痛みが取れると、もうすこしご飯が食べられるかなぁと思うのですが……」
「穿刺吸引も開窓術も推奨治療じゃないんだよ」
「……穿刺も開窓術も結局は再発……しますよね」
「まぁ、するね」
症状が出てきてから行う内科的な治療も外科的な治療も、全部対処療法。完治も寛解もしない。
残るはTR病院で塞栓術。
必ずしもTR病院がやってくれるとは限らないけど。
「まずは痛み止めで様子を見ましょう」
それで症状が治らないようなら、穿刺して水を抜く。それでもまだダメなようなら、TR病院で塞栓術を検討とステップを踏むことになった。
次回は3ヶ月後。
なおS先生は12月いっぱいで異動とのことなので、次の先生に全部託すって感じ。
まぁ異動しちゃうなら、これから治療(対処療法だけど)しましょうっていう患者は、次の先生にまるっと引き継いじゃうのがいいよね。
「具合が悪くなったら、3月まで待たずに受診して」
「わかりました」
肝臓の嚢胞も、次の先生にもう一度聞いてみようか。S先生は気さくで話しやすいけど、肝心な部分が有耶無耶。こちらがある程度事前に調べているだろうというのが前提になっている。まぁ調べているから話についていけてるけど。
ご飯があまり食べられない、痛い状態が速やかに改善される方法を、地元で提示してもらえると思っていたので、実はちょっとしょんぼりしてる。
なによりサムスカの話がでて、「疑い」が「確定」になったように感じた。これは思ったよりショックだった。心のどこかでは、そんなに悪くないと思っていたからだ。
すくなくとも11月に紹介状片手に再受診した時は、「前回と大きさ変わっていない」と言われていたので、問題は肝嚢胞だけだと思っていた。(とはいえ多発性肝嚢胞は明確な診断ガイドラインがないため難病指定されておらず、難治性疾病扱いになっている。研究は進んでるんだかわかんない)
せめてもの救いは、私たちには子供が居ないので、突然変異した私の遺伝子が次世代に行かないのが良かったかな。(50%の遺伝確率)
薬局で処方された1日3回87日分(不要時スキップOK)のカロナールは、なかなかの量でちょっと引いた。
コレ飲んで痛いのがなくなるといいなぁ……それだけでも楽になるかなぁ。
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