第6話.狐耳の少女とルイス・ナバーロ③

「よし、じゃあ逃げるぞ」


 ルイスは慌ててマリベルから視線をらすと、彼女の手を取った。

 廊下には先ほどの見張りが倒れたままだが、起きる気配はまるで無い。見張り二人を無視して一階へ向かう。


 階段を駆け上がり、影になっているところから出口へと続く廊下をうかがう。幸いなことに出口までの廊下には誰もいなかった。


 ルイスはマリベルのほうへと振り返って頷くと、マリベルの手を引いて廊下を走る。


 半分ほど走ったところで、出口付近にある柱の影から一人の男がゆっくりと姿を現した。

 ルイスは慌てて足を止める。


 その男は、白地しろじに赤をあしらった騎士服に身を包む偉丈夫いじょうぶで、ルイスより頭一つ分かそれ以上に高い。それに加え、厚みのある筋肉に覆われた、がっちりとした体格をしている。


 ルイスが事前に調べた情報によれば、彼の名はバルドゥル。イザベラ専属の騎士団である、赤薔薇の騎士団ローテローゼリッターの団長を務める男だ。

 槍を持たせたら一角ひとかどの男という評判だが、今は槍を持っていない。


 その代わりに片手剣で武装している。

 さすがに室内での槍は取り回しが難しいのかもしれない。


「なんだか嫌な予感がして来てみたら、鼠が入り込んでやがったか。その娘はイザベラ様にとって、大事な道具だ。連れて行かれるわけにはいかねぇな。置いて行くなら見逃してやらんこともないぞ」


 バルドゥルは腰の剣を抜くと、それをルイスへと突きつける。


「ふんっ! そう言われて、素直に置いて行くと思うか? それに道具扱いとはひでぇじゃねぇか。ここは力づくで通らせてもらう」


 ルイスはバルドゥルを睨みながら右手で短剣を抜いた。その刃には毒でも塗ってあるのか、ねっとりとした液体が表面を覆っている。


「ほぅ。この俺とやろうってのか。おもしれぇ」


 バルドゥルもまたルイスを睨み返す。

 周囲の空気がピリピリと緊張感を増していった。




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🔸ルイス VS バルドゥルどっちが強い?

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