第6話 成長期


 

「はぁぁ……やっと着いたぁ……」


 会社の階段を上り終えると、僕は壁に手を着く。一階の受付まで郵便物を取りに行っていたのだ。普段はエレベーターを使用するが、生憎と今日は点検中である。


「運動不足かな?」


 便利なことは良いことだが、頼りすぎるのは良くない。以前階段を使った時よりも段数が多く感じられた。普段の運動不足を反省する。


「おや、聖川くん。こんな所で如何したのかい? 体調が悪いのかい?」

「あ、課長。いえ、大丈夫です。その……久しぶりに階段を使ったら思いの外疲れてしまって……」


 影が差し顔を上げると、花園課長が心配そうな顔をしている。僕は姿勢を正すと、疲れていた理由を口にした。


「嗚呼、成長期だからね」

「え? 成長期ですか?」


 合点がいった様に両手を合わせる課長に、僕は首を傾げる。成人を迎えてから、僕の成長期は終わった筈だ。


「そうだよ。あ、郵便ありがとう。貰っていくね」

「あ、はい……」


 課長は僕が抱える郵便物を受け取ると、背を向け廊下を歩いて行った。花園課長は時々、不思議な発言をする。結局、何の成長期か分からなかった。

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