第2話 室疑応答


 

「聖川、課長に会議の時間が変わったことを伝えて来てきてくれ」

「分かりました」


 向かい側に座っていた国枝先輩から小声を掛けられた。書類から顔を上げると、如何やら先輩は電話応対中のようだ。他の先輩達は席を外しており、手が空いているのは僕だけである。急ぎの連絡なのだろう。僕は立ち上がると、変更時間が書かれた紙を受け取った。


 〇


「失礼します。花園課長、聖川です」

「嗚呼、如何かしたかい?」


 課長の部屋のドアをノックし声をかけると、ドア越しに課長の返事が聞こえる。本来

 ならば対面して用件を伝えるのだが、ドアノブには来客中の札が下げられていた。


「会議の時間が変更になりました。十四時から、第三会議室で行います」

「分かった。ありがとう」

「失礼します」


 ドア越しに先輩から渡された紙の内容を伝え、その場を離れようと踵を返した。


「おや、聖川くん。私に何か用事があったのかな?」

「……え……? 課長?」


 目の前には花園課長が立っていた。先程まで、僕はドア越しに課長と話していた筈だ。


「ほら、入って」


 彼が僕の横を通り過ぎ、ドアノブを握るがそこに来客中の札は無く。


 開けられた部屋には、誰も居なかった。



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