シクラメン

ゆきのともしび

シクラメン


「今日おなじクラスのふたりから、きみってやさしいねって言われたんだ」


少年が庭のいすに座り、花をスケッチしながらはなす。



「でもね、やさしいのはぼくじゃなくて、そのふたりのほうだと思うんだ」


「どうしてそう思うの?」


僕はきく。


「だって、やさしいねってぼくに伝えてくれたことがやさしいから。

ぼくより、そのふたりのほうが、おおきいやさしさを持っているとおもうんだ」


少年は首をかしげながら、花をみている。



「でも、やさしさに大きいも小さいもないんじゃないかな。

くらべられるものではないよ。」


僕はいう。





「じゃあきっと、みんな色がちがうんだね。

やさしさのいろ」



少年はシクラメンを、濃いピンク色で塗る。




「やさしさも、いろでみえればいいのにね。

そしたらさ、世界はいろんないろであふれていてさ、

たくさんのひとと話をして、いきるのがたのしくなるのにね」



少年はシクラメンを、ロイヤルブルーで塗る。



少年のお母さんが、キッチンから紅茶を持ってくる。




マフラーに顔をうずめながら、僕は紅茶の色をみていた。










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シクラメン ゆきのともしび @yukinokodayo

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