第26話 マントの中の世界②
玄関から入った最初の部屋は応接間である。
天井の高い広々とした空間になっており、窓には日よけ布がかかっているが、透けているため光が差し込んでいて明るい。全面が白い壁紙になっており、中央には立派なテーブルと三人掛けのラクチェア(布のかかった長椅子)が複数備え付けてあった。
また、壁際には食器棚が置かれていて、中には白地の素朴な
だが、客をもてなすためのものがあってもあまり意味をなさない。クモイ以外の人がここへ来るのは数年に一度、一人か二人が来るくらいだからだ。
とはいえ、それらはクモイが用意したわけではなく、元々あるものなので仕方がないのだが。
この部屋に用のないクモイは素通りして、次の部屋へと行く。今度の部屋はさらに広かった。
床は円形上に作られており、例えば大人が二十人手を繋いで、部屋の
天井は吹き抜けになっていて、どこまで続くのかというほど高い。そして二階部分から上の階には、階の半分にずらりと本棚が設置されており、本もぎっしりとつまっている。
本だけ置いてあると暗くなりがちだが、それぞれの階に置いてある本棚の向かい側が大きな窓になっている。そのため、窓から入る光と天窓から降り注ぐ淡い光によって程よく明るい。本を読むにはうってつけの場所だ。
しかし、ここには階段がない。
では、どうやって各階へ行くのかというと魔法を使うのだ。「浮遊」という魔法を使えば、階から階へ宙に浮いて移動できる。
だが、クモイはこの部屋にも目もくれず通り過ぎ、隣接している調理場のある部屋も止まらずに進む。
さらに奥の部屋に入ると、大人二人は
「……」
程よい硬さのベッドが、クモイを優しく受け止めてくれる。
彼は
大きな窓なので、そよそよと草花が揺れているのが見える。どうやら外で風が吹き始めているようだ。そして鳥の鳴き声も聞こえてくる。
しかし風も鳥の鳴き声も魔法だ。
ここはマントの中にある空間ではあるが、実際にはマントの中に空間があるわけではない。正確には、「マント」が「
本物と魔法で作り出されたものが混在するこの場所は、ある理由でクモイが管理することになったのだが、いつの間にか一七〇年が経っていた。
「やっと約束を果たせる……」
クモイは呟く。
己の人生はまだまだ続くだろう。呪いが解くには条件が
クモイは重くなってきた
先程まで
「……」
クモイは窓から見える「星空に見立てた天井」を確認したあと、訪れた
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