第11話 俺と幼馴染(8年たって)

 あれから8年。


 公爵家の仕事で、郊外の領地に行っていた俺。

 帰ってくるなり、ルイスとアリスが婚約を解消したと、父から聞かされた。

 王命で仕方なく嫌がるアリスを婚約させたことを、ずっと気にしていた父は、小躍りする勢いで喜んでいた。


 あり得ない。あのルイスだぞ! 

 アリスへの思いが重すぎて、こじらせまくっているルイスだぞ。


 月一回のアリスとのお茶会は高熱があろうが、隣国の王族がこようが、何が何でも死守するルイスだぞ。

 アリスと話もできないくせに、アリスのことはやたらと詳しいルイスだぞ。

 それが、他の女を連れているだと!?


 俺は父に詰め寄った。


「裏は取ったのか?」


 父は、はーっとため息をついた。


「公爵家の息子とは思えない品の悪さだな。裏? 取るわけないだろ。真実なんてどうでもいい。アリスの婚約さえ解消されれば万々歳だ! ルイス殿下に女ができて、アリスとの婚約が解消された。いいか、マーク、絶対調べるな! わかったな」

と、俺に念を押し、去っていった。


 つまり、父も何か裏があると思っているのだろう。


 いくら王命であっても、ルイス自身が信用のおけない奴だったら、父は宰相を辞めてでも、婚約を承諾しなかっただろう。それくらい、アリスを溺愛している。


 俺はすぐに調べ始めた。父の言うことなど、はなから聞くきもない。


 こう見えて、……とういうか見たまんまか、俺はお上品な貴族の息子じゃない。

 調べる手段は色々持っている。


 早速、手に入った女の報告書を読む。

 野心の強そうな女だが、ややこしい背景はない。政治がらみではなさそうだ。

 

 やはり、ルイスの顔と王子という立場に引き寄せられてきた女か。


 が、そんな人間たちに群がられて、幼い頃から散々嫌な目にあってきたルイス。

 普段は、絶対に近づかせないのに、何故だ……?


 考えても、らちがあかん。本人に聞くしかない。

 何度もルイスを訪ねる。が、会えない。

 

 居留守か! いい度胸だな、おい!

 もし、俺の納得できない理由だったら、二度とアリスには会わせないから覚悟しとけ。


 婚約解消から一週間後。いきなり、ルイスがやってきた。

 

 ルイスの説明を聞くと、全く理解できない行動だった。

 普通するか、そんなこと? やっぱり、こいつはアリスが絡むとただのバカだ。


 が、このよくわからない行動で、やっとルイスはアリスとまともに話をした。


 8年もの間、あんなに死守していた毎月のお茶会で一体何を話してたんだ?

 不器用にもほどがあるだろ。


 が、これほど、アリスを思っている男もいない。

 再び婚約するとなったら、間違いなく暴れるだろう父を取り押さえておいてやるよ。


 だから、ルイス。アリスを頼んだぞ。

 その重すぎる愛で、幸せにしてくれ。

 そして、ルイスも幸せになれ。



※ マーク視点はこれで終わりです。次は本編に戻ります。

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