第12話 変化 

※ アリス視点に戻ります。



 衝撃の告白の翌日。

 私の目の前には、優雅にお茶を飲んでいる、無表情の美形がいた。


「あの、ルイス殿下。……いえ、ロバートソン公爵様。何故、また、うちにいらっしゃるのですか……?」

と、私は聞いた。


「アリスに会いたいから。それと、俺のことは、ルイスと呼んでくれ」


「では……ルイス様」


「いいな、それ」

と、つぶやいたルイス様。


 青い瞳がきらきらしている。

 もしや、喜んでいるのかしら?


 あいにくマーク兄様は不在だから、通訳はなし。

 私が解読しなくてはと、無表情の顔の変化を探す。


 すると、頬がほんのり赤くなり、心なしか、顔がゆるんでいるようにも見える。


 無表情なのに、かわいい……。なんか、ずるい。


 この8年間、苦手意識が先に立ち、ルイス様の顔をこんなにしっかりと見ることはなかったわね。

 なにしてたんだろう、8年も。ちょっとしんみり反省。


 いや、でも待って? お茶会の態度、ひどくなかった?

 もう怖くもないし、今なら、聞けるわ。


「何故、ルイス様は、月に一回のお茶会の時、私に、小さいなって毎回言ってたのですか?」


 すると、ルイス様は、ちょっと考えてから、言葉を選ぶように話し始めた。


「本当は、小さくて、……かわいいと言いたかった。だが、はずかしくて、小さいとしか言えなかった」


 ええ!? あれ、まさかの誉め言葉だったの? 

 衝撃だわ。口下手すぎるというか……。


「なら、お菓子を差して、これ食べろとかって命令していたのは何故なのですか?」


 ルイス様は驚いたように目を見開いた。


「命令じゃない。俺のおすすめの菓子を教えていただけだ。それに、菓子を食べているところがかわいくて、見たかった……」


 かわいいを連発され、顔が熱くなってくる。


「アリス、色々すまなかった。でも、俺はアリスと共に生きていきたい」


 青い瞳が、真剣な気持ちを雄弁に語っていることが伝わってきた。


「今すぐには婚約は考えられないけれど、これからもっと話をして、お互いを知っていきましょう。それから始めてもいいですか?」


 私が言うと、ルイス様はうなずいた。

 口の端があがり、うっすらと微笑む。


 ドキッ。

 思わず、胸を押さえた私。


 無表情からの、ほんのわずかな変化なのに、なにこれ。

 破壊力がすざましいのだけれど……。


 それから、ほぼ毎日、時間を作って訪ねてきてくれるようになったルイス様。

 

 1年後。

 そのお顔が、表情豊かに見えてしまうようになった頃、私は、ルイス・ロバートソン公爵様と改めて婚約を結んだ。

   

 最初の婚約の時は私が大泣きしたけれど、今度の婚約ではルイス様が涙を流して喜んでくださった。そのことは、私の宝物として、胸に大切にしまっている。


 無表情のベールの奥に、沢山の表情を持つルイス様。

 そんなルイス様を、もっともっと知っていきたい。

  

 だから、ルイス様。末永くよろしくお願いしますね。



  

  (本編 了)




 ここまで読んでいただいて、ありがとうございました! 

 

 ここからは番外編として、アリスの知らないお話(知らないほうがいい話だったりするかもですが……)をメインに書いていきます。

 癖が強めの登場人物がでてきますので、時に暴走していきます💦

 もしよろしければ、読んでくださったら嬉しいです。

 どうぞ、よろしくお願いいたします!

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