一二章 小悪魔は報いを受ける(後半)
「えぐ、うぐ、ひっぐ……」
すでに授業ははじまっている。けれど、とてもではないが出席出来るような状態ではなかった。今朝の
「……
「……ああ。あの日、
けど、声は充分に届く距離だったから。
「おれたちも、他に人なんていないと思って声を潜めたりはしていなかったしな」
「なんて間の悪さだよ。そんな偶然、あるか普通?」
「あったんだから仕方ない。そう言うしかないな」
「そうは言ったって……」
「けど、と言うことは
「おれたちがそんなことを言えた義理じゃないな。遊びで人の気持ちを踏みにじったのは事実なんだ」
「そ、そりゃそうだけどよ……」
その間にも
「あたし……あたし、ひどいことした。
「な、なに言ってるの!」
泣きじゃくりながらそう言う
「罰ゲームで嘘告させたの、あたしたちじゃない!
「そ、そうだよ、それをおれたちが無理やりやらせたんだから。
ふたりの言葉が友情からのものであることはまちがいなかった。けれど、
「関係ない! あたし、実際に嘘告したもの!
そう言われてしまうと
「
罰ゲームだなんて忘れてた。嘘告だったなんて忘れてた。本当の彼女になったって思い込んでた。でも、ちがった。
あんな風に冷たくしたんだ。
やり返してやるために。
「全部、ぜんぶ、あたしが悪いの!」
「戻りたい。あのときに戻りたいよ。そうしたら、本気で告白するのに。罰ゲームでも、嘘告でもなくて、本当に『付き合ってください!』って言うのに……」
「だったら、いまからすればいいじゃん!」
あきらが
「もう一度、告白しなよ!
「そうだよ、
「そ、そうだよ! おれだって、メチャクチャうらやましかったんだぜ。男同士だからわかる。
「おれもそう思う。
四人の連れのそれぞれの言葉を
「出来ない! 出来ないよ。だって、もう知られちゃってるんだよ。あたしが遊びで嘘告するような女だって。平気で人の心をもてあそぶ人間だって。そんなこと知られて……もう
泣きつづける。
互いの顔を見合わせ、うなずきあった。
昼休み。
ふたりは
「なっ? だから、あれはおれたちが無理やりやらせたんだよ。
「そうだ。悪いのはおれたちだ。怒ったり、軽蔑したりするならおれたちにしてくれ。
ふたりは改めて頭をさげた。
「そのときのことは知っている。すぐそばで聞いていたんだからな」
「だったら……!」
興奮して詰め寄ろうとする
「聞いていたならわかっているはずだ。すべて、おれたちが無理やりやらせたことなんだ。
「お前たちは……」
「人をからかって楽しもうとした。それも、自分たちよりもはるかに低い立場である下位カーストの人間を相手に。自分たちに逆らえない立場の相手を選んでもてあそぼうとした。それが事実だ」
「そ、それは……」
その通りだけど……。
「暇なやつらだ」
「なんだと……?」
「親の顔で高校に通わせてもらっている立場でありながら、自分を鍛えるわけでもなければ、将来のことを考えるわけでもない。やることと言ったら、人をからかって遊ぶことだけか。とんだガキだな」
「なっ……!」
「あいにくだが、おれはそんなガキの相手をするほど暇じゃないんだ。もうおれには関わるな」
そう言い捨てて歩き去ろうとする。
その
「おい、まてよ! いくらなんでも、そんな言い方……」
「げふっ!」
「知らないのか? パン屋とは喧嘩するな」
その日の午後。
その報が学校中を駆け巡った。
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