第十一首「お布団の 毛玉をとって いるのだが むしろ生んでる 気がする土曜」
まさかとはおもうが、常に脳内が猥褻物で満たされている由香李である。自分が書いている官能小説が現実に侵食し、自制がきかなくなった可能性も……。
しかしどうする。本来であれば俺の方が一つ年上だから導いてやらねばならないのかもしれないのだが、そんなことできる気がしない。
「ちょっ! 由香李、さん…………心の準備が…………どきどき」
由香李は眉をつりあげながらも小声で話す。
「何ふざけてるんですか! まさか忘れたんですか、この家のことを」
「いや忘れてはいないが……まさか音まで拾ってるのか?」
状況を察した俺も声を落とす。
「……どうやらそのようです。確証がないのですが、鎌をかけてみる価値はあるかと。前に練習が三回連続で璋子様の授業と重なったことがありましたよね。それであやしいな、と。畦長様がわたしたち従者の行動について知りすぎている節があります」
「服についているということはないのか」
「ないとはいいきれませんが、まだ小型化には成功していないと思います。それも試してみれば白黒はっきりするでしょう」
「それもそうだな」
布団の中で指で合図を出す。
二人とも布団から出る。
「で、なんでしたっけ、成通さん?」
「練習の日取りなんだけどな。明後日とかどうだ? 明後日ならみんな集まれそうなんだが」
「明後日は私も大丈夫だったはずです」
「そりゃよかった。じゃあ空けといてくれよ」
「承知しました。それでは明後日、よろしくお願いしますね」
「ああ。じゃあ、またな」
「あ、成通さん、それと練習場の管理人さんからお叱りをいただいた話ですが」
「ん」
「それってわたしの歌のせいだけですか?」
そういって由香李はにっこり笑ってみせる。
「お前の方がよっぽど疑わしくなるよ、俺は」
俺は肩をすくめるとひらひらと手を振った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます