第二首「闘球の 球に似たるは さつまいも 蹴鞠の鞠は 帆立に似たり」

 叩きこんだ力が炸裂して地面が鳴動する。鋭利な石片が無数に飛びちるが、こちらには届かない。

 晴が結界バリアボールを囲い、どうにか防いでくれていた。

 しばしの奮闘の末に、ボールはようやく穴掘り作業をやめた。

 晴のような混沌師カオシスト組織チームへの参加、練習への立ち会いが義務付けられているのは、空から落ちてくるボールの勢いを殺すため以外にも、こうした不測の事態への対応がある。もちろんいつも感謝しているのだが、こういうときは本当に晴がいてくれてよかったと思う。

 晴が腕をだらりと下げると、鞠を囲う結界バリアが消え、そこにこもっていた土煙が解きはなたれ辺りにたちこめた。それがしばらくして晴れると、一面の落葉が姿を現した。風がそれを巻き上げる。赤や黄色、それに時おり茶色の枯れ葉が混じって渦ができ、乾いたカサカサという音を立てて舞った。季節外れの銀杏とかもそこら中に生えていた。

 脚骼レガースの副産物が景観を破壊すると管理人から苦情がくるので、時節に合った春の歌をくれ、と由香ゆかに頼んだ結果がこれだった。まったく思いつかないからと秋の歌ばかり寄こした。

 明日文句をいおう。

 それより今は目前の問題だ。

 晴は肩で息をしている。さすがに負担をかけすぎた。

「すまん」

「ばかーーーーっ!」

 肩をいからせながらのしのしと歩いてきたのは和泉だ。

「あんた何やってんのよ! 一歩間違えたら全滅だったのよ! ぜ・ん・め・つ! すまんで済むわけないでしょーが! まだあたしはいいわよ、でもね、あんたの尻拭いを全部したのは晴なんだかんね! とにかく晴に謝んなさい! 謝ってだめなら誠意を見せなさい! 誠意を見せてもだめなら諦めなさい!」

 いわれなくとも謝ろうとしていたのに、そこでこう、わかっていることを何度も何度もやれと命令されるとやる気がなくなろうというものだ。しかし、だからといってむっつり黙ってしまうのもおかしな話だ。悪いと思っているのは本当なのだから。

 立ちつくしている晴に駆けよる。

「……すまん。少し足元が狂っちまった……」

 汗が晴の額を伝う。

「……問題ない。失敗は誰にでもあること」

「そう言ってもらえると助かるぜ……」

「ただ……あなたが失敗するとは露ほども思っていなかった。あれだけ最初に円陣までやろうといって一人だけ異様に士気が高いからどれほどのものを見せてくれるのだろうと期待が高まっていたのは事実。いいだしっぺのくせにお前がしくじったら元も子もないやんけ、とは思ったけれど猿も木から落ちるというから仕方ない。けれどそれは猿のように木登りを熟知するもの——つまりその道の達人と称する類の者がふとしたはずみで思いもよらないような失策を犯したときに使うべきだからそれにあなたがあてはまるかは疑問」

「あの…………怒ってます?」

「怒っていない」

 怒っていた。

 どうにか怒りの矛先を逸らさないとまずい。

 俺は焼き芋屋のおっさんに責任転嫁することにした。

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