第6話 自在への道②

前回、鍛錬の重要性を説きましたが、鍛錬にもやはり大事な心構えがあります。


鍛錬には師が必要です。


我流だけでクラシックのプロピアニストになった人は恐らくいないでしょう。


我流とは、新たな道を作り出すことですから、ある意味、師がいないのは当然です。


しかし、前人未踏の道を行くにもしても、そこに至るまでの過程で、必ず誰かに教えられて来たはずです。


私達が何事かを上達する上で、師とは切っても切れない関係があります。


それが会ったことのない本や映像の中の人物であったとしてもです。


ここで重要なことがあります。


それは「師の言う通りにする」ということです。


私達は誰かを師と仰ぎながらも、その人の様々な欠点を見つけては評価を下げてしまいます。


そうするうちに、いつの間にか師と言いながらも、心のどこかで師を見下すようになります。


立ち止まりましょう。


なぜその人を師に選んだのでしょうか?


学びたい部分があったからのはずです。


自分に無い技術や考えを持っていたからのはずです。


その点において、私達は師より劣るのです。


ならば、そこに到達するためには、自分の考えやセオリーはいったん捨てるべきです。


それがあるために、師の到達している領域に達することが出来ないのだ、という可能性があるからです。


例を上げるなら、武道で重要な要素の脱力があります。


師はそれを教えたいと思い、力を抜け、と指示します。


しかし、初心者の私達は、誰かが演じる力強いパンチに憧れ、それを目指す故に、力みが取れず、結果いつまで経っても師の要求も、自分の理想も満たすことが出来ない…


そんな感じです。



自分が何処かに到達したい時、自分のやり方や考え方を一度完全に捨てることは、非常に近道になります。


無我とか、悟りとか、空とか、そういう言葉に込められた現実的な意味を掴んで、日常の中に落とし込みましょう。



自分を捨てる。自分を出す。


これもまた目指すべき自在の形の一つです。

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