第41話 おっちゃんフレンド
「成る程、確かに……。お金や権力は、あるに越したことはないです。過程を評価された結果として、いただけるなら欲しいですよ。食べられず、
「……ほう。先程から恋の道や武士道と口にしているが……。忠誠心はないと?」
「いえ、忠誠心では負けたくないですな。……
「……すまない、私には良く分からない。自分に忠義を誓うとは? 王に忠義を誓うのではないのか?」
だがそれは己という刃を武士道で磨き抜いた末、この人に刃を預けたい。
この人の為になら、死ねると順に至るもの……。
決して『王』と言う名や
「俺が重んじる忠義とは、
「君の言う天とは、ガンベルタ神の事……ではなさそうだね?」
枢機卿と言う教会でも最高クラスの権力者に語るのは正直、
しかし嘘を吐くべきではない。
嘘は、自分の信義と名を貶める。
「はい。
理解は出来ないが、納得はしてくれたのだろうか?
ノルドハイム枢機卿はワインを口に含み、何度か頷いている。
「成る程……。少しだが君の言う事や求める事が理解出来たよ。しかし……だ。人の意志というのは、時に対立するとは思わないかね?」
「ええ、大義は対立します。国や王が
そう、結局の所――騎士道も武士道も、武人としての在り方、生き方の違いでしかないのだ。
それぞれに果たすべき役割を見定め、
「……君は
「はははっ!
俺の笑顔に釣られたのか、ノルドハイム枢機卿も笑みを浮かべる。
何度も頷きながら、ワインを口にして――やがて、心からの和やかな笑みを浮かべた。
この表情を見るに、俺への不信感は解けたのかな?
友人の父に不気味と思われるのも、悲しいからねぇ。
「……ここまで踏み込んだ会話をするつもりは、当初なかったのだがね。……君は人の
「そうでしょうか? もしそうなら、皆さんが俺のような者へ親しみを抱いてくれるお陰ですな。友人であるテレジア殿やエレナさんと良い、
我ながら、本当にそう思う。
よくぞまぁ……俺のような人斬りの周りに、人が集まってくれるものだと。
どなたからも学ぶべき所がある、尊敬する人ばかりだ。
だから俺も、サムライとして礼を尽くし報いたい。
「……ふふっ。私は君がとても気に入ったよ。さながら吹き抜ける青空のように気持ちの良い少年だね、君は。それでいて、まるで歳上なのかと思う程に深い思慮と確立した見識も持ち合わせているようだ」
「それはまた……俺のような人斬りに、畏れ多い評価ですな。そんな大した男じゃないですよ?」
「
人間とは不完全な生き物、か。
成る程……それもまた、武士道にせよ恋の道にせよ、真理なのかもしれない。
不完全だからこそ、道を歩む。
道の
歩み続けた最期に、自分が歩いた道に納得出来るかどうか。
それだけなのだろうか?
「君に足りない所は私が
「――是非! 俺はノルドハイム枢機卿には、既に親しみと敬意を抱いていますからね! 同じおっちゃんとしても、人間としても!」
「ははっ。本当に――君は面白いね? 約束しよう。私は対等である友を、決して見捨てない」
「俺もですよ。テレジア殿もエレナさんも、そしてノルドハイム枢機卿も……。俺の大切で護りたい方々です。義の道が敵対しないことを心から祈りつつ――友となりましょう」
握手は交わさなかった。
おっちゃんになると、形ばかりの握手よりも――心の繋がりを求める。
若い頃より遙かに難しくなる心の繋がり、真の友人を――。
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