第33話 ジグラス王都の生活
王都へと帰り着いたのは、日が傾いてきた頃だった。
夕陽に照らされた地平線の
何処の世界でも、人にとって衣食住は基本にして生活の質を左右する。
食を支える畑を見るのは、気分が良い。
俺も久し振りに、畑を
城門に近づくと、
わざと
そして兵たちは王都の城門を
馬は王都の
毎月それなりの管理費用が
各々が自由行動となりエレナさんもテレジアさんも、それぞれが家路についた。
また必ず、近々再開されるであろう王立学園で会おうと約束を交わして。
俺は準男爵以下の身分の者が通う
2人は男爵以上のキチンとした貴族が通う
学年もクラスも違うが、再会の時が楽しみだ。
とは言え――。
「――俺は何処に行くかな? 実家はもうラキバニア王国に占領されているしな」
テレジア殿やエレナさんは、王都に実家があるんだろうか?
2人とも足を止める事もなく、それぞれに道を進んで行ったが……。
テレジア殿の実家は王都だろうな。
父と会えと言われていたし、学園もある王都に
「エレナさんも男爵と言っていたな。
何分にも人の記憶と統合されたもので……。
しかし、そうだ。
ルーカスも学生寮に住んでいる。
「よしよし、道もゆっくり思い出しながら進めば分かる。先ずはこの汚れた
今回の
しかし……もしも報酬が手に入るなら、先ずは
願わくば
「おっちゃんでもピシッと清潔な服を着て身を清めていれば『不潔だ』と避けられるリスクが減るからなぁ」
近寄っただけで鼻を
人は第一印象が大切だ。
清潔でピシッと
「もし報酬が出なければ、冒険者ギルドとやらで依頼を受けるのも良いな」
思えば……僅かばかりの金銭は持ち合わせているが――日々の食事にも困る程に手持ちは少ない。
兵士としての俸給が支給されるにせよ、されないにせよ、だ。
「薬草集めに
思わずスキップでもしそうなぐらい、足取りが軽い。
行軍を終えたばかりだと言うのに、な。
若い肉体は素晴らしいね!
「ふむ。この世界で基本の食事……日本で言う米に相当するパンが、1つで120ゼニー前後の物価か」
寮へ向かう道すがら、記憶を統合し確認する意味合いも兼ねて商店街を横目に眺める。
この世界の通貨は10進法を採用しているらしい。
鉛貨が1枚で1ゼニーの価値。
銅貨が10ゼニーで、大銅貨が100ゼニー。
同じように10倍して行き――小銀貨、銀貨、金貨と価値が上がっていく。
一般的に流通されているのは金貨までで、価値は1枚で10万ゼニー。
1000万ゼニーもする白金貨なんかは貴族間や大商人の取引にしか用いられない……はずだ。
多分、恐らく。
ルーカス・フォン・フリーデンの記憶が確かならば。
この
通貨の流出をコントロールする権限を握ってなら、それは宗教以外でも多大な権力を持つはずだよな。
「衣服は安いものでも一着で8000ゼニーか……。う~む、早く稼がねばな! 欲しい物の為に大好きな剣を振るう。経験を積め、依頼を果たせば金銭も受け取れ冒険者ランクも上がり、人助けにもなる!
流石に兵が解散して翌日から学園再開とはならないだろう。
これだけ国力が削られた大敗の後だと言うのもある。
死傷者や功罪を把握するのには、時間を要するものだ。
まして、実質的に大敗を喫しているのだからな。
動員された学生兵の安否確認も含め、王都は
「おお、上手そうな香りだ!」
踏みならされた土の道を歩いていると、肉の脂が焼ける良い香りが
何の肉かは分からないが……俺は花の蜜に吸い寄せられるミツバチのように露店へと歩みを進める。
「へい、いらっしゃい!」
「店主、これは1本いくらですか?」
「80ゼニーだよ! いくつ買ってく?」
成る程、80ゼニーか。
手持ちは――鉛貨が7枚。
それに銅貨が3枚に大銅貨4枚、小銀貨が1枚……か。
つまり全部で……1437ゼニー。
「依頼を終えるのは、だいたいが1日がかり。明日の朝と昼の食事代金代を
そうでなくとも前世では、軍事や
「よし、10本ください!」
「あいよ、800ゼニーだね!」
手持ちで一番価値のある小銀貨が消え、代わりに大銅貨が2枚帰って来た。
「……決して計算を間違えた訳ではない。
中身がおっさんになるにつれて、
本当に言い訳ではないけれど、腹が空いては戦は出来ない。
武士道と恋の道に満足して戦場で散る。
そんな生き様を送る為にも、
そうして俺は見慣れぬ
―――――――――――
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