第18話 聡明な女性
「考えはありますよ。まだ情報不足で
「それは良いけど、何をするの?」
「やるべき事、知りたい事は色々とありますが……。馬の
「……うん、分かった。口籠も布も、私の団員が2日も頑張れば何とかなる。……それを聞いて、だいたいやろうとしてる事は理解した」
この情報だけで察するとは……エレナさんは頭が良いなぁ。
見た目通り、
「助かります。ああ、あのゲルティ侯爵から約束通り騎兵が送られて来たら、
何かを考える時に髭を擦るのは……まさにおっさんに染み付いた癖だな。
全く、若者の肉体に早く精神を追いつかせねば。
いや、無理に追いつかせなくても良いのかな?
うん。おっちゃんだからこそ、若い尊さを存分に実感して満喫が出来る。
そう思うと――この状況も悪くないな。
「良いけど……。ルーカスくんは、どうするの? 一旦、逃げる?」
「逃げる? 俺は護るべき者を置いて敵前から逃げたりしませんよ。――武士の名にかけて」
敵前逃亡?
この俺が?
生前では有り得ない疑いだ。
新鮮過ぎて――思わず高笑いしそうになってしまう。
「ルーカスくんがゲルティ侯爵に使い潰される未来しか、私には見えない。国から逃げても良いと思う。と言うより、
「ほう。俺のような者を心配してくれるのですか? エレナさんは、お優しいですな」
「……別に、普通」
「はははっ。
あのテーブルの上に置かれた地図……
しかし敵のだいたいの位置が分かっただけでも、無いよりはマシ。
奇襲を掛けるなら――先ずは正確な情報収集からだ。
「
「大丈夫ですよ。俺は――
初めての負け戦に、今頃は敵も慌てて立て直しを図っているだろう。
指揮官を2人も失い、統率を失った軍団。
それは――情報の詰まった宝箱の蓋が開いているのと同じ状況だ。
後任の指揮官が派遣されるなりなんなりで規律を立て直される前に、やれる限りの事をやってやろうじゃないか。
「――さて、日暮れまでは、もう少し余裕がありそうだ。挨拶と準備をするとしようかな?」
「準備なら私も付き合う。肩書きのある私が居た方が、万全の準備が出来る」
「これはありがたいですな! エレナさんは本当に聡明な御方ですねぇ~」
「ん。……普段は言われても、何とも思わない言葉なのに。……なんでだろ、今は嬉しい」
「移動をしながら、魔法に関する情報について聞いても良いですか? 発動速度の平均やストロングポイントにウィークポイントなど。知りたい情報が山と有るんですよ!」
「分かった。魔法の弱点は、発動すると誰でも察知が出来て、必要魔力を
さて……エレナさんの協力があるのは本当にありがたい。
日が沈むまでに出来る限り異世界の魔法を知り、戦略を考え、道具も
この状況を十分に利用してやろうじゃないか――。
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