第7話 薄笑いは――人斬りのスイッチ
「――お、おい! そこの貴様、
立ち塞がる敵兵を切り伏せ、敵将に向かい走る俺の背に――そんな声が聞こえた気がした。
だがチラとそちらを見れば――
「早く、早く敵将を討たねば!」
「あれが魔力……。記憶にある者と実際に見るのでは、全く違うな」
魔力と言うのは、よく知らん
魔法もてんで分からない。
刀で斬り合う戦術から銃の
物覚えの悪くなったおっさんに、新しすぎる概念を0から叩き込まないで欲しい。
だが銃の射程が伸びたとか、連射力が上がったのと同様――知識のアップデートなら、0からよりはマシだ。
元々、この身体の持ち主は
魔法についても、浅くなら分かる。
知識を最低限しか学べない場所で、真剣に学習しようとしていたことに感謝だ。
でも――俺のようなおっちゃんは、自分が使う物だけ理解し、
と言うより、それが
少ない学の中で、魔法というのはイメージだと言う
この魔力による肉体強化と物質強化は非常に分かりやすい上に、剣術にも通じる。
「
優れた
体術も同様、0から限界までを如何に素早く合理的に行うかだ。
敵を見、学び。
そして
「コツさえ覚えてしまえば魔力量が少なく劣等生と言われたこの肉体でも――人間相手には十分すぎるな」
人間との戦闘で魔力が無駄に量があっても仕方がない。
使い方が正しくなければいけない。
竹で作った
同じ水の量が入っていても、押し出された水が
穴が大き過ぎる――つまり無駄遣いをしている魔法は、
そんなドバッと浴びるような物は、温泉の湯だけで良い。
酒を飲みながら、温泉で
こちらで言うパートナーと共になら、なお素晴らしいだろう。
こんなことを言うと、おっさん臭いと言われてしまうかな?
実際に中身はおっさんだし、気持ち良いものに嘘はつけないから仕方ないけどな!
「――はははっ! 知識の
「な、なんだコイツ!? 戦場で笑ってやがるぞ!?」
「深入りして辺りが見えてやがらねぇのか!?」
「完全におかしくなってやがる! 何故だ、何故――
「止めろ! これ以上は進ませるな!」
全身を立派な
だが――これぐらいでは、問題にもならない。
真の死線を潜り抜けて来た。
「魔力とは素晴らしいな。鎧の
磨いてきた技の高みを、若い肉体で探求できる。
それは特に武士道における武力の
「この世界特有の魔力で強化された剣士としても、まだまだ伸び代だからけの
戦に明け暮れた前世でも真髄――納得の行く
たとえば、今世では人間らしく恋の道も歩んでみたり……。
見合い結婚や政略結婚だったとしも、そこに護るべき愛する家族と言うものが出来れば、きっと――。
「何年生きようと、やりたい事が広がる未来があれば心に活力が満ちるな。……歳をとり未来が狭まれば、その活力が失われがちでいかんね。もっと視野を広げねばな。はははっ!」
全く……。
滅びの道しか残されていなかった俺が、こうなるとは……。
人生とは、最期の最期を迎えても分からないものだな!
最高に
新しい肉体になる前なら、心臓の病を疑う程に
戦場に一度立つことを決めたなら、迷いは
元々、おっさんなんてのは若い時と比べて――人生を
自分の働きに一々、悩む事も少ない。
若ければ――自分の仕事が、この人斬りに果たして意味があるのか。
あらゆる事で
おっさんは、1つの事で手一杯。
そんな訳で――。
「――馬に乗った騎士に囲まれ、立派な鎧を纏うおっさん発見。敵将と見た! その首もらい受ける!」
「――こ、この男……口元で薄く笑っているぞ!?」
「ひ、人斬りに
「こ、殺せ!
ラキバニア王国子爵の
威力は凄まじいけど、魔力がつむじ風のように
これなら、鉄砲や弓の方が避けにくいね。
「な、何をしている!? 雑兵になどいくら当たっても構わん! もっと大魔法を放て!」
「は、はい子爵!」
「わ、我々もやっているのですが……。あやつ、この状況でも薄ら笑いを浮かべているだと!? 舐めやがって
ああ、子爵よ。
貴様は――俺が人斬りとして、斬るべき悪だ。
心に長年の落ちない汚れが付着した――若者の未来を黒く塗りつぶす、おっさんだよ。
思わず薄ら笑いが浮かんでしまうのは――俺が人斬りとして斬るべき、
―――――――――――
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