十人X色

 あ、あー。よし、声は出るな。なんだか不安で、眠れなかった。覚悟を決めろ。

A「あのー、えーっと。」

B「どうしたの?」

A「今日は、ちょっと・・・話したいことがあるんだ。」

B「ああ、そうなの。・・・二人の方が良い?」

A「うん、出来れば。」

B「なら、ちょっと待ってて。」BはCの方へ向き、こう言った。

B「あっちで遊んできなさい。ちょっとお兄さんとお話しするからね。」

C「えー、お兄さんと遊びたーい。」

B「もう、わがまま言わない!」

A「ははは、後でね~。」

C「じゃあじゃあ、ブランコしてて良い?」

B「いいけど、ケガしないようにね。」

C「やった~!」タッタッタと駆けていくC。

B「まったく。」

A「子供は、元気が一番ですよ。」

B「元気過ぎるのも、考えものです。・・・ふふ。」

A「そういうもんですか・・・へへ。」

B「・・・それで。話っていうのは?」

A「あー、あ。そうですたね。すみません。」

B「ふふっ。落ち着いて。」

A「ふーーーっ。・・・はい。」覚悟を決めたA。こう言った。

A「結婚してください。」

B「・・・・・え。」

A「ふたりを守れるほど強く無いですが、僕にその、二人の人生に混ざって・・・あーえっと。違くて。えーっと。」

B「もちろん、お願いします。」

A「本当ですか!?え、ほんとに!?・・・やったー!」飛び跳ねるA。照れ臭そうに寄り添うB。遠くで無邪気にブランコを漕ぐC。

・・・場所は公園。もちろん野良猫がいる。猫はまるで時の流れや空気が読めないように、ベンチで包まる。少し目を開けた。公園の情景を綺麗な瞳で映し出す。そこに幸せそうな家族は居らず、ひとりブツブツと不快な音を口から吐き出すひとりの薄汚れた男が一人立っているだけだった。AもBもCも居らず、気味の悪い男(X)のみが立っている。現実から目を背けるように、白い野良猫は・・・静かに眼を閉じた。

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