八人の犯罪者
例えば、密室殺人。これが完全犯罪を語る上で欠かせない議題ではあるが、これを簡単に言おう。完全犯罪ではない。「密室」の時点で完全ではないのだよ。完全犯罪の定義を言うならば、本人以外誰一人にも気づかれず、犯罪を遂行し、それを悟られぬまま生涯を終える。これを完全犯罪と言う。密室という違和感は確実にどこかで何かを悟らせる。だから、ここでは取り扱わない。ここで扱うのは、完全犯罪を成した8人の人間を取り扱おうと思うのだ。
「ああ、いらっしゃい。」
「あんたが、JACK?」
「そうだよ。」
「ここにいるのは?」
「僕と同じ、7人。」
「本当なんだね。」
「そうだ、この世界で完全犯罪を遂行したのは、切り裂きジャック以降、8人いる。まず、そのことに気づいた僕。敬愛なるJACKを名乗らせてもらってる。」
「自己紹介はいい。さっさと本題に入ろう。」
「・・・せっかちは良くないね。」
「うるさい、もう後が無いんだ。教えてくれ。あんたたちが見出した現代社会における完全犯罪。それは一個人100万ドル以内で、行える完全なる犯罪を享受すると。」
「うん、いいよ。」
「ここに200万ドルある。助けてくれ。」
「うんOK。なら、ここにある交番に行って、○○番地で起こった事件の容疑者は私です。と言うんだ。そしたら、そのレシートと駐車券を見せるんだ。大きな証拠となる。」
「おい、それでは俺は犯罪者になってしまう。」
「いいや、軽い罰金で済む。ちょっとした交通トラブルがあってね。その替え玉ってわけ。」
「おお、なら良い。それで100万ドル。」
「いや、手元にほとんど残ると思うよ。軽い罰金さ。」
「そ、そうか。分かった。すぐに行ってくる。」
翌朝、新聞に大きな見出しで記事が出回った。今まで未解決の8つの殺人事件の同時解決。犯人の自首により事件は明るみになった。まさか、この8つの事件が同一人物による事件だったとは。世間は賑わっていた。きわめて不可能に近いが、可能ではある距離において別々の無差別的殺人。犯人は極刑を免れないだろう。そして、真犯人である8人はこれをもって、完全に身の潔白が証明されたわけである。しかし、完全ではない。なぜならこの一部始終を見ていたこの犯人は知っているからだ。だから更なる仕掛けがある。この8人すらも誰かの替え玉だったとしたら・・・それを知る由もない。完全犯罪である。
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