ストーカー

 今日はいつもと違う気がする。・・・・・もちろん、悪い意味で。いつもの帰路にいつもの光景。なのに何だかぞわぞわする。なんだろう、ほんと。

しばらく進むと異変に気づいた。足音が自分ともう一つ。重なるようにあることに。

まいったな。もうすぐ家だ。そこまで来られるわけにはいかない。いつもとは違う道を使って、ダッシュをしよう。曲がり角にさしかかった時に、ダダッとダッシュをした。久しぶりの全力疾走で、呼吸が乱れる。あれ、こんなに走れなかったっけ?急に足に重りが付けられたようだ。ずしんと足が重くなりがたがたと震える。・・・付いてくる足音は無い。どうやら撒いたようだ。ふう、良かった。

ついでにホームセンターに寄った。

そして、しっかりと背後を確認しながら、帰宅する。自宅の扉前。鍵を取り出して・・・。あれ?なんだ、合わない。こんなカギだったか?自宅の部屋番号を確認する。うん、合ってる。なんだ?何が起こってるんだ。・・・すると、声が聞こえた。

「きゃああああ!」背後か?いや違う。部屋の中から聞こえる。

「・・・どうしました!?」俺はガチャガチャとドアノブを握る。

「はあ、はあ。やっぱり来ました。」ガチャリと扉が開き、屈強な男が部屋から現れた。背後には青ざめた顔に、震える手足。しかし髪とか肌の手入れは欠かさずに、どこかの女優かのような姿かたちをしていた。というか彼女を自分は知っている。

「・・・○○さんですね?5時40分現行犯で逮捕します。」

「・・・なんだ?何を言っている?」意味が分からない。だってここは・・・。

「あなた、一度ストーカー容疑で注意喚起を受けている。」

「・・・気持ち悪い。」女性はぼそりと呟く。

「なのに変わらず、合鍵でも作っていたのか。本当に、お前は。」

「ここは俺の家だ。」

「・・・そんなわけないでしょ。」

「だって、ここの間取りや家具の配置、灯りの付いている時間。ゴミを出す曜日、好きな音楽、仕事に行く時間、帰ってくる時間。昼に食べる食事、休日共に外食する友達、寝る前に通話する家族。これらすべてを把握しているのに、それでもここは俺の家じゃないってのか!なあ!」彼女は、ゴミを見る目でこちらを睨んでいた。あとストーカーってのは後ろから付いていく気味の悪い存在だろう?おれは先に来ていた。その時点で違うじゃないか!

警察と思わしき人物はこう言った。

「潜伏とか、盗撮や盗聴なんかは今まで見てきたが。初めて見たよ。家の所有者を語る、先行型のストーカーって奴は。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る