龍の伝承
龍とは、力の象徴である。力の中でも強さの象徴。圧倒的ともいえるそれは、なぜこんな形をしているのか。空に居て、巨大だ。これは世界各地どこをみてもこの形なケースが多い。
「先生、これを見て気になった事があります。」
「何かい?」
「昔の人がこの価値観を生み出したとしたら、おそらく人型になるんじゃないかと。」
「それは何故?」
「昔も今も、強さは権力のもとにあるでしょう?いわゆる王族とか。」
「ふむ、そうか。」
「昔は特にその傾向が強いと、私は思うんですが。」
「なら、教えましょう。」
「ええ、お願いします。」
「まずですね、歴史には人類誕生から今に至るまで、明らかに千年の空白がある。」
「へー、そうなんですね。」
「そこで人類は一度、文明の限界へたどり着いた。」
「え?」
「その時は、科学ではなく魔術の世界ではありましたが。それは名称の違いでしかないです。・・・これは関係ない話。本題に戻ろう。」
「・・・・・。」
「なに、簡単な話です。それまでは人だったんだ。龍と呼ばれる芸術品から資料までね。では、何故あのカタチになったのか。それは、この空白の千年文明の滅びにある。」
「それはいったい。」
「戦争です。」
「・・・え?」
「世界大戦とは比較できない、それはそれは、凄惨な戦争です。なにせ歴史に残らないわけですから。人っ子ひとり生き残っちゃあいない。まあ、そういう兵器を使用したわけです。その兵器をイメージしてください。」
「・・・はい、しました。」
「どんなイメージ?」
「・・・爆発です。」
「はい正解。その爆発はやがて煙となり、天へと昇る。それはまるで、龍のように。」
龍とはつまり、滅亡の象徴であった。そう語る大学教授はこれまで経験したかのような哀しい目をしていた。
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