異世界転生について

 異世界転生の話をしよう。ここで重要なのは転生条件の「死」についてだ。転生が死によって引き起こるのなら、線引きが難しくなる。人間には仮死状態があり、さらに脳死など様々な死のカタチがあるわけだ。転生と同時に肉体が消失する?死の危険がトリガー?魂の異動?よく分からない。曖昧である。なので、ここでは転生の条件を「気絶状態」とする。それでは転生後、2つの世界で同じ人間が存在する可能性があるって?それなら大丈夫。一つ方法を思いつきました。それでは、小さな物語を一つ。


男は無職で引きこもり。今年で30歳を迎える。ああ、灰色の青春に少しでも色が映っていればこうはならなかったかもしれない。そんな風に考えながら、深夜の誰もいない田舎道を少し歩く。ヘッドホンをしていた自分の不注意もある。突然曲がり角から、車が飛び出した。それと同時に頭に死がよぎる。接触すれすれで男は気を失った。・・・しばらくして。目を開けてみるとそこは、知らない世界。RPGゲームや童話のようなメルヘンでファンタジーな世界が広がっていた。少し歩くと、小さな妖精が話しかけてきた。

「見ない顔ね、どこから来たの?」

「・・・○○。」

「○○?どこよそれ?・・・あんた面白いね。」

「え?」

「ついてきて。」

小さな妖精に手を引かれ、この世界のカタチを知る。異世界だ。主人公になった男は当然のように特別な力が宿り、仲間を得る。世界を脅かす敵を倒し、姫を救出する。さらに問題が起きて、それをまた解決する。そして英雄となった主人公は、幸せな家庭を持ち、順風満帆な余生を謳歌する。そして、老いていく。子や孫に見守られながら、ゆっくりと深い眠りにつく。それは100年を生きた伝説の終わりとなった。


・・・・・目が覚めた。現代。意識を取り戻した瞬間、とてつもない痛みと衝突音で、夢のような世界から一変、煙と血、大声と薬品の匂い。最悪が常に更新されていく。もう殺してくれと嘆こうにも声が出ない。ああ、楽にしてくれ。・・・これはどちらも現実だ。


異世界で100年経過するとき現代世界では0.1秒経過する。なら、一瞬の気絶でも世界を救う英雄くらいになら、すぐ成れるという算段です。これで異世界転生の問題も解決ですね。めでたしめでたし。

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