第3話違う蜜の味

まさか、こんな事になるなんて。夢にも思わなかった。

俺は、初めてのキスの相手を探す為に。ある人物を

待ち伏せしていた。だが、そこに幼馴染の富田藍が

現れて。そして、俺は、藍とキスをしていた。

いや、違う。藍にキスをされていた。それは、

ほんのり甘い蜜の味がした。でも、俺の初めての

キスの相手じゃないと、俺は瞬時にそれに気づいて

しまった。「えっ⁉藍?今、俺に・・・・・・」

俺は、戸惑いが隠せず。藍とまともに、喋られなく

なっていた。俺が、目線で、藍を見つめる。そこに

写っていた。藍の表情は、恋する。乙女の表情に

変わっていた。あの、小さい時から。知っている。

友達としての彼女ではなく。今、俺の目の前にいるのは。

俺の知らない。もう一人の富田藍だった。頬を

赤らめ。俺との視線を微妙に背けっていた。

そして、二人の間に、沈黙が流れる。その時間が

何時間にも感じた。沈黙を破るように。藍が、口を

開いた。「ごめんね。急に、こんな事して・・・・・・」

「あっ・・・・・・。いや・・・・・・その・・・・・・」

俺は、うまく喋られなかった。「私さぁ、ずっとね。正夜の

事。好きだっただよねぇ」ぎこちなく笑う。藍の顔を

まともに見れなかった。「でも、あの時、放課後の

教室で、正夜がキスされている所を見てたら。私さぁ、

焦っちゃて」「はぁ?藍、お前、見てたなのか?」

「うん」小さく、藍の細い首が縦に振る。そうか

藍は見ていたのか。俺が、誰もいない。放課後の教室で

キスをされていたのを。待てよ。つまり、それって

もしかして。「なぁ、藍」「何?」「お前、もしかして

知ってるんじゃないか?」「何を?」「俺のキスの相手が」

「・・・・・・」「その沈黙は、見たって事だな」

「・・・・・・・」やっぱり、そうだ。藍は、俺の

初めてのキスの相手を知っている。知っているから。

俺に、急にキスをしたのか。藍のずっと温めてきた。

俺への好きの気持ちを。その相手に盗られってしまう

かも知れないから。だから、こんな強引にこんな事をした

のか。俺は、藍の気持ちを知らずに。自分の初めてのキスの

相手を探していた。もう一度。その子とキスをする為に。

だから、俺は、口を開き。藍に聞いてみた。「誰なんだ?

俺の初めてのキスの相手は・・・・・・」自分の心臓の鼓動が

速くなる。これで、俺は知れると思っていた。だけど「教えない」

「はい?」「正夜には、教えない。だから、私ともう一度。

キスをして」思わない言葉が、藍から返ってきた。どうやら

俺は、ドロッとした。濃厚な違う蜜の味の本当の甘さを知る事に

なるかもしれない。

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