1-42 人影
ラグーンシティの外れにある侵入不可区画。
ボロボロで生活感の残らない廃墟が乱立し、アスファルトはひび割れ、壁にも無数の傷が残るここに突如として光が現れた。
光が収束するとそこには四人の男女が立っていた。
その内の三人が示し合わす事もなく、一斉にある言葉を口にする。
するとその体が光に包まれ服装が変わった。
銀髪でストレートの少年は白と青の淡い色彩がメインの和服姿に変わった。
少女はピンクのカチューシャに上着もピンク、
最後に銀髪で天パの少年が黒と赤の入り乱れた羽織姿へと変わった。
そこで一人の少年が伸びをした。
「ん~、この景色もすっかり見慣れたな」
「ちょっと。余裕が出来てきたからって油断してると、痛い目を見るわよ」
「そーそー、油断は大敵だよ。さて、今日は何体出てくるのかな? ちょっと前から敵の数増えてなかったけど、さすがにそろそろ方針変えて来てもおかしくないよね?」
「そうですね。待っているだけでは先手を打たれかねませんし、もう少し余裕が出来たらこちらから攻めたい所ですが……」
そう言って唯がフィアの方に視線を向けるとフィアは首をぶんぶんと横に振る。
「相手もやり手ね。未だに居所は
四人は話しながらビルの上に向かう。
まずは敵の数を把握しなければならない。
屋上に着くとフィアが双眼鏡を取り出して五百メートルは先に出現した大きな穴の付近を観察する。
「えっ!?」
少ししてフィアが
「どうした? 何が見えたんだ?」
「遂に相手が本気を出したとか!?」
「きっと大丈夫です。私達も強くなりましたから!」
「おい、フィア! どうなんだ!?」
ようやくフィアが双眼鏡を下ろして渡してきた。
雷人はそれを受け取ると急いで覗き、フィアの見ていた方向を見る。
すると大型や人型のロボットがまさに穴から出て来ている所だった。
それはいつもと同じなのだが……何と言っても数が多い。
「何て数だよ……」
「まずいわね……。凄い数を投入して来たわ。今までのは様子見だったのかしら?」
フィアが苦々しく言う。
穴から出て来ているロボットは少なくとも百は超えているだろう。
とてもではないが数えきれない。
「百体は軽く超えてるだろうな。まだ出続けてるし、くそ、数ばっかり増やしやがって」
状況に
「でも、一体一体は大したことないし、無限に出てくるわけじゃあるまいし、少しずつ削っていけば問題無いんじゃないの?」
「全てを倒すだけなら可能でしょうけど……、さすがにこれ以上増えるとこちらも被害無しで対処出来る確証はありませんね。それに……」
「えぇ、こっちとしては橋を渡られたら負けだもの。四人だけで出来るかは疑問が残るところね」
四人は不安そうな顔をしながら空中に空いた大きな穴を見ていた。
するとようやく終わったのかロボットが出て来なくなった。
それに安心した雷人達だったが、穴が閉じる直前、小さな人影のようなものが降り立つのが見えた。
「……ねぇ、今、人影みたいなのが見えなかった?」
「私も見ました。遠いのでよく分かりませんでしたが、ロボットよりはどことなく人みたいだったような気が……」
雷人達の間を静寂が包み込む、ずっと似たような攻め方をしてきていたので、心のどこかでこのまま状況は悪化しないのでは? と思ってしまっていたのだろう。
突然の状況の変化に意識の切り替えが出来ない。
「……逆に考えましょう。今までは何が目的なのかさえ分からなかったけど、相手が人なら目的がはっきりするわ。事態の解決への手掛かりが向こうから来てくれたってことよ」
「……ああっ! 難しい事を考えるのは止めだ止め! こうしてる間にも奴らはこっちに向かって来てる! とにかく動かなきゃ始まらないぞ!」
雷人が上げた大声に空も唯も一瞬びっくりしたような顔をするが、すぐに顔を引き締める。フィアも雷人を見て微笑んだ。
「……そうね。雷人の言う通りだわ。でも適当に突っ込むのも無駄が多いし、まずは罠を張りましょうか」
フィアはそう言って金属製のボールを取り出した。
*****
ロボット達が現れておよそ十分、そろそろ接触してきてもおかしくない頃合いだ。
「よし、こっちは準備オッケーだ、言われた通りにしたぞ」
「こっちもオッケー、初めてやったから上手く出来てるかはよく分からないけど」
「こっちも多分大丈夫です。出来る限りのことはしましたし、後は全力で事に当たるだけですね」
雷人、空、唯の報告を受けフィアは立ち上がった。
両手を繋いで伸びをする。
「んー、ふぅ。それじゃあ行きましょうか。あっちもこっちの強さはある程度把握しているはずだし、それでも乗り込んで来るくらいだからね。さっきの人影は間違いなく強い奴だと思うわ。だから私が相手をする。もしあなた達の所に来たらすぐに報告しなさい! 敵の数は分からないけど、あなた達なら出来るはずよ。ロボットは任せるから人影は私に任せて!」
「あぁ、任せた」
「うん、こっちは任せて」
「頑張ります!」
全員の返事にフィアは笑みを浮かべた。
信じあえる仲間がいるのは何と素晴らしい事か。
えも言われぬ幸福感に緊張が
あっちは任せた。自分は、自分の仕事をこなすだけだ。
「それじゃあ、行くわよ!」
「了解!!」
それぞれ離れた配置についていた四人は合図と同時に駆けだした。
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