1-40 ノインとルイルイ

「ただいまー」


「あっ、お帰りなさい。皆さん」


 雷人達が待機室に戻ると三人の女性がソファに腰掛けてくつろいでいた。

 一人はお馴染みのシンシアさんだが、残りの二人は一体誰だろうか?


 片方は見た感じ中学生くらいだろうか?

 おどおどとした感じの小柄な女の子だ。


 上は胸までの長さのトップスに腰くらいまでの長さの外套がいとう羽織はおっている。

 胸はひかえめだが、確かに膨らんでいるのが分かる。


 その上、お腹が出ていてきめ細かそうな白い肌とおへそが見えるので、目のやり場に困る。

 下はショートパンツだが、腰にギリギリで引っかかっている感じで何とも危なっかしい……。


 髪は銀髪で前髪は両サイドの髪が肩くらいの位置まで垂れており、後ろの髪は一本の三つ編みにして肩にかけるようにして前側に垂らされていた。


 瞳は薄い黄色で、こちらを上目遣いで伺っている。

 うっすらと開く口からは、八重歯やえばのぞいていた。


 もう一人は落ち着いた雰囲気の女の子だった。

 見た感じでは小学生ぐらいの年だろうか?


 こちらは巫女のような服を着ているが、もう一人と同様に露出が多い。


 肩とお腹、短めのスカートから伸びる足が見えている。

 およそは長い振袖によって隠れているものの、気を抜くと視線が柔肌やわはだに吸い寄せられる。


 その肌も同様に白くたたずまいもはかなげな感じで、思わず守ってあげたくなるな。


 髪はロングでウェーブが掛かっているゆるふわな感じだ。

 頭には……おそろいなのか? フィアが付けているのと非常によく似た星形の髪飾りが付けられていて可愛らしい。


 加えて、この二人には大きな特徴があった。

 なんと、二人ともケモミミと尻尾があるのだ!

 さらに言えば、巫女服の少女は尻尾が九つもある!


 ……そんな二人を見て雷人達三人が固まっていると、真っ先にフィアが反応した。


「あ! ルー、ノイン久しぶりね!」


 フィアが二人に向かって飛び込んだのである。

 雷人達はポカーンと擬音が流れそうな程に口を開けてそれを見つめていた。


「ただいま、フィア。今回は結構長引いちゃったから、帰るの遅くなっちゃった」


 銀髪のルーと呼ばれた少女が小さな声で話している。

 言葉がたどたどしく聞こえるのが、やはり話すのが苦手なのだろうか?

 ぱっと見だけで人見知りそうな印象を受ける。


「本当なのですよ。ルーがもう少し積極的に動いていれば、もっと早く帰って来れました。反省するといいのですよ」


「あぅ、ごめん」


 二人はフィアの頭を撫でながら後ろで固まる雷人達に目を向けた。

 目が合うとさっとルーちゃんがノインちゃんの後ろに隠れる。


 二人とも小さいが、ノインちゃんの尻尾は九本もあるために結構広い面積を占めているので、体はしっかりと隠れている。ただ、頭から生えている耳だけがピコピコと覗いていた。


「どうやらしばらくいない間に人が増えていたみたいですね。新入社員ですか?」


「は、初めまして」


 雷人達は自分達の事を言われている事に気付き、それぞれ自己紹介をした。


「えっと、俺達は皆仮入社ってかたちでここに所属してるんだ。名前は成神雷人。よろしくな」


「僕は常盤ときわ空。空って呼んでね。よろしく」


「私は朝賀唯と申します。よろしくお願いします」


 それぞれ名前を言いながら頭を下げると、それを見て二人も自己紹介をした。


「そうですか。私はシュバンツ・ノインと言いますです。見ての通り、狐の獣人族なのですよ。あ、この服はここの社長の趣味で私の趣味じゃないので、それは間違えないで欲しいのですよ。よろしくなのです」


「うちは……スリガロ・ルイルイって言います。じ、時間は掛かると思いますけど、仲良く出来る様に頑張るので、よ、よろしくお願いします」


「ルーはあがり症なの。しばらく一緒にいればマシになると思うから、気長に待ってあげてね」


 相変わらずおどおどとした様子のルイルイちゃんにフィアがフォローを入れた。

 そこで突然ノインさんがすっと立ち上がった。


「さて、フィアの顔も見れた事ですし、そろそろおいとまするのですよ。まだやらなければいけない仕事も残っていますから」


「えっ、もう行っちゃうの? 来たばかりなんだからゆっくりしていけばいいのに」


 ノインちゃんの言葉にフィアが残念そうに言う。

 すると、ルイルイちゃんもそれに便乗した。


「あぅ、まだ新しい子達にも慣れてないから、私ももう少しいたいな」


 それを聞いてもノインちゃんの意見が変わる事は無かった。

 だが、その表情は少し残念そうに見えた。


「……ダメなのですよ。今は仕事が多くて忙しい時期なのです。ルーを遊ばせておく余裕はないのです。非常に残念ではありますが、またの機会にゆっくりするのですよ」


「そ、そっか。それじゃあ、ま、またね」


 ノインちゃんとルイルイちゃんが扉の方へ歩いていく。

 しかし、見た目では二人とも幼く見えるのに忙しいとは……という事はやはり強いのだろうか? この会社にいるのだから俺達よりは強いのかもしれないな。


 それにしてもノインちゃんは一番幼く見えるのに凄くしっかりしている。

 どうも人は見かけに寄らないらしい。まぁ、能力者ならそれも当然か?


 そんな事を考えながら歩いて行く二人を見送っていると、ノインちゃんが部屋の入口に辿たどり着いた時に足を止め、こちらを振り返った。


「……もう少ししたら忙しい時期も終わるはずなのです。その時にはゆっくり遊びに来るのですよ。フィア、新入りの皆さん。それではまた、なのです」


「ば、バイバイ」


「うん、待ってるわ。仕事頑張ってね」


 フィアは手を振り、雷人達は会釈えしゃくをする。

 出て行く時のノインちゃんの横顔には少し寂しさが感じられた気がする。

 もしかしたら、本当は大人ぶっているだけなのかもしれないな。

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