1-39 どうやって開けるんですかこれ!?

 目を開けると案の定カプセルの中にいた。

 俺は顔に手を当てて呟いた。


「はー、唯の奴強いなー。開発した切り札が相殺そうさいされるなんてな」


 雷人は少しキョロキョロしてボタンを見つけるとそれを押してふたを開けた。


 外に出て隣のカプセルをのぞくと唯が困ったような表情でこちらを見ていた。

 防音性能が高いので、何を言っているのかはよく聞こえない。まぁ、なんとなく分かるけど。


 一応自分の入っていたカプセルに近付き、ボタンを押すと案の定というか助けを求める声が聞こえた。


「何で? 何で? どうやって開けるんですかこれ!? びくともしないです! 雷人君! 雷人君!?」


 唯はふたを叩きながら若干涙目になっていた。


 そういえば前回は自分も開け方が分からなかったなぁ。

 などと思いながらカプセルへ近付き、脇にあるボタンを人差し指で指し示した。

 するとようやくボタンに気付いたようで、唯はすぐにふたを開けた。


「な、なるほど、こんな所にスイッチがあったんですね。少しパニックになってしまいました」


 少し恥ずかしそうに顔を逸らす唯。

 カプセルの中は別に暑くは無いはずだが、慌てた所為なのか肌がほんのり赤く、ちょっと汗ばんでいて少しなまめかしく見えるな。


 雷人は首をぶんぶんと振ると、不思議そうにこちらを見ている唯に話しかけた。


「お疲れ。知ってはいたけどやっぱり強いな。凄いじゃないか」


 褒めると、唯は頬をさらに赤くさせて照れたようにうつむいた。


「い、いえ、そんな。雷人君の方が凄かったですよ。最後のは今出せる全力だったのに相撃ちでしたし」


「いやいや、あの形状変化フォームレスを使った陽動にはまんまと引っ掛かったからな。それにしても最後のあれは凄かったな。あれも能力の一つなのか?」


「あっ、はいそうです。聖剣から光線を飛ばすシンプルな能力なんですけど、今はあれが最大威力です。雷人君のは多分、もっと威力を出せましたよね?」


 唯の言葉に雷人は口に手を当てた。


「いや、出来なくはないけど電気を溜めるのには時間が掛かるし、あの時はあれが全力だったよ」


「そうなんですね。じゃあ、今回は引き分けですね」


「そうだな。それにしてもとんでもない成長スピードだよ。一月前まで出力が足りなくて使い物にならなかった能力とは思えないくらいだ。その急成長は一体何が原因だったんだろうな?」


「そう……ですね。なにぶん、能力が発現してそれほど経ってませんから、訓練を頑張ったおかげかと」


「あー、またイチャイチャしてる。ちょっと目を離すとすぐにこれなんだから、雷人はもう少し痛い目を見た方が良いんじゃないの?」


 少し顔の赤い唯を見てそう思ったのか、不満そうな顔で空が口をはさんできた。

 向こうはいつの間に終わっていたんだろうか?


「そっちも終わったのか。どうだったよ。一発くらいは入れられたのか?」


「無理無理、フィアさん強過ぎるよ。攻撃がまるで絨毯爆撃じゅうたんばくげきだからね。とてもじゃないけど近寄れないよ」


「ははは、まぁそうか。全力のフィアには俺も近付ける想像が出来ないんだよなぁ」


 そんな事を話していると当の本人、フィアがカプセルから身を起こした。

 その視線が空へと向けられ、目を細める。

 そして目線を雷人に向け、カプセルから出るとフィアは言った。


「あんた達はまだ一ヶ月しか経ってないんだから、さすがに負けてられないわ。私はもっとずっと前から訓練してるんだからね。さて、疲れただろうし一度部屋に戻って休憩しましょうか」


「そうだな」


「はいっ!」


「分かりました」


 フィアの提案に確かにちょっと疲れていた三人はそれぞれ返事をし、フィアに付いて行く。


 雷人は空が敬礼をしているのを見るに何かあったんだろうな。とは思うものの何も言わないでおいた。なんとなく想像はつくからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る