ゆきのともしび


顔を洗い、着替えをして


家を出る


からだが


そとの空気につつまれる


肌が呼吸をする


まるでおなかを空かせた少年のように


大気をむさぼり、食べているかのようだ


「ちょっとまって。そんなに必死にならないで」


こころがいう


「わたしはまだ、今日を生きたくないの」




うれしそうに歩くダックスフンドと、疲れた顔の飼い主が


後ろからわたしを追い越す



「美しさの反対は醜さなのかな?


愛の対義語は無関心だと、だれかが言っていたよ」




コーヒーの中にミルクを注ぎ


混ざり合う瞬間を想像する



光と影のみで構成されるモノクロ写真は


なぜあんなにもうつくしいのか




わたしは 駅へ向かって歩く


母が編んでくれた


アイボリーのマフラーを巻いている



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ゆきのともしび @yukinokodayo

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