ep12 杉菜
黒板消しはスポーツなのです。
ゴミ拾いがスポーツなのだから、黒板消しもスポーツなのです。
雑巾掛けがスポーツなのだから、黒板消しもスポーツなのです。
大鎌草刈がスポーツなのだから、黒板消しもスポーツなのです。
誰が何と言おうと、僕にとって、黒板消しはスポーツなのです。
僕が黒板消しに情熱をかける理由。
誤解されることも多いが、決して奉仕心などという下らない理由によるものではない。
次に授業をする先生が、授業をしやすいように黒板を整えること。それは先生の為ではない。
決められた時間内で、如何に綺麗にするか。黒板消しは、僕にとって|運動≪スポーツ≫であり、|娯楽≪スポーツ≫だ。
|成長特化型≪天才であり無才≫の、僕が輝けること。それが黒板消しだ。
キーンコーンカーンコーン……
「キヲツケッ!……礼ッッ!」
授業終了と同時にチャイムが鳴り、春若竹の号令が響く。
授業と授業の間の十分間。
尤も、授業が終わってすぐに立ち去る先生は少なく、二、三分ほど生徒と談笑したり、次時の授業予定を教科係に伝えたり、その教科の内容について質問する生徒に答えたりする。
また、次校時の授業の先生も、授業が始まる一、二分前には来る。
僕も次の授業の準備もしなければならないので、十分丸々使えるわけではない。
とにかく、黒板係の仕事の時間なのです。
黒板消しのフローチャートに従って、黒板に黒板消しを滑らせ、上へ、下へ。右へ、左へ。
黒板消しクリーナーに掛けて、再び黒板に黒板消しを滑らせる。
黒板の桟に、黒板消しとチョークを並べ、スクリーンを貼る。
いつもの作業、いつもの流れ。それが心地よい。
よし。チョークの粉で汚れた指先を、ジャージの裾で拭って、僕は自席に戻った。
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