【オフコラボ】FMK1期生で料理対決!【ナキ/幽名/小槌/☆】#1

【オフコラボ】FMK1期生で料理対決!【ナキ/幽名/小槌/☆】




「――はい、ってにゃワケで配信スタートするよ~! みんにゃ準備は出来てる?」


 そんなこんな不安要素てんこ盛りで始まったオフコラボだったが、開幕と同時に見てる俺含め、その場に居たFMKの面子は全員が圧倒されていた。


 だって配信が始まる10秒前までは、瑠璃はずっと不機嫌モードのままだったのだ。

 それが配信開始と同時に、ニコニコ笑顔の萌え萌えボイスである。

 感情の緩急が凄すぎて普通に困惑させられた。


 VTuberという器への入り込み具合が尋常じゃない。

 そこに関しては、ウチの箱の中では瑠璃の右に出る者は居ないだろう。

 FMKはナキ以外は大体素だからな。


「ステは準備オッケーデース! 最高のリョウリを作るデース!」


 いち早く立て直した☆ちゃんが、変な間が空かないように即座に呼応してくれた。

 それに続いて残る幽名と小槌も声を上げる。


「わたくしも用意出来てますわ。今日は腕によりをかけて、審査員の皆様を唸らせてご覧にいれましょう」


「うんうん、私は姫様とおにゃじチームだから頼りにしてるね」


「え、ええ、期待してくださいませ」


 配信外であんだけバチバチしてたのが嘘みたいに普通に話掛けてるし、なんかもう怖いくらいだ。

 配信に私情を一切持ち込まないのは素直に尊敬に値する。我が妹ながら恐ろしい。


 瑠璃がどれだけVTuberという職業に真剣に取り組んで居たのかが、こんな状況になったからこそ痛いくらいによく分かる。たとえアンチに馬鹿にされようとも、案件が台無しになるくらいなら怒りを飲みこめと言っていた覚悟も、今だからこそ理解出来る。


 瑠璃はいつだって本気でVTuberとして活動していた。

 それを俺は、妹が猫語尾でリスナーに媚びてるのを見るのが恥ずかしいなんて理由で、これまでちゃんと見てこようとしなかった。


 でも今日からは最後まで一瞬たりともナキから目を離さない。

 俺はこの時確かそんなことを考えていた。


 1ヶ月後にナキが突然居なくなるとも知らずに。

 そんな未来が来るなんて夢にも思わずに。


「小槌も準備万端かにゃ?」


「今日は私が本当の料理ってものを教えてやるわ」


 格好付けながら小槌がそれっぽい台詞を言う。

 なんらかの料理を題材にした作品を意識してるっぽいけどなんだろうな。美味しんぼか?


「いくわよ……いざ、クッキングバトル!!!」


 クッキングファイター好だったかぁ。

 微妙にニッチなとこを選んできたな。


「勝手に始めようとしにゃいでね、まだ企画の説明とかあるから」


 元ネタを知ってか知らずか、さらっと流してナキが料理対決の説明に入る。


「今日の料理対決は、2対2のチームに分かれて戦うチームバトルににゃってます。Aチームは私と姫様」


「Bチームはステとコヅチデース!」


「料理のお題は『米料理』! 制限時間にゃいに、お米を使った料理を一品作って、審査員に評価してもらうよ!」


「審査員には5名のVTuberをゲストで呼んでるわ。じゃあ、審査員席の右から順番に自己紹介してもらおうかしら」


 小槌に促されて、審査員席右端のライバーが「あ、はい」と返事をした。

 それに合わせて俺は配信ソフトをポチポチと操作する。配信に載るように、審査員その1の立ち絵を表示したのだ。今回はこういう雑用は運営スタッフが全てフォローするようにしている。

 で、審査員1は、我がFMKの移籍組筆頭の笛鐘琴里だった。


「こんにちは、笛鐘琴里です。えーっと、今日は姫依ちゃんの手料理が食べられると聞いて、ワクワクしてやってきました。どんな料理が食べられるのか今から楽しみです。頑張ってね、姫依ちゃん」


「ありがとう琴里、頑張りますわ」


「ちょっと! 審査は公平にしてよ琴里! あたしの金一封が掛かってるんだから! あ、リスナーに説明してなかったけど、この食戟に勝ったチームは運営からお小遣い貰えるのよ」


 なにが食戟だ。

 小槌が二の腕に白い手拭い巻いてるからもしやと思ったが、そっちも意識していたらしい。

 てっきりあの布を取ったら特級厨師の紋章か何かが出て来ると思ったのに、ソーマの方かよ。


「はい、時間が勿体にゃいので次の審査員どうぞ」


「密林の御影星だ。言っとくが、あたしは味にはうるせーぞ。料金以下のマズイ飯を食わせるレストランに代金を払わねえなんてしょっちゅーだからよ」


「どこの承太郎だ、アンタは」


 審査員2人目は、密林所属の御影星みかげぼし 石珀羅々せきららだ。

 元ネタ知らない人間相手だと炎上しそうな危険な自己紹介だが、まあメジャーネタなので小槌がすかさず拾い上げてセーフ判定。

 んで3人目。


「同じく密林所属! 打麦さらら! 華麗に参上! 好きな料理は蕎麦&蕎麦! 蕎麦以外の料理は食べる気にすらなりません! よろしくです!」


「デモ来たカラには、ちゃんとタベテ審査してってくださいデース」


 打麦とかキャンプ以来だな。

 御影星は夏合宿の人狼会にも来てくれてたけど、打麦は本当にあの一回きりの絡みだったのでなんか懐かしさすら感じる。まだあれから2、3ヵ月程度しか経ってないけど。

 香川県民のクセにうどんじゃなくて蕎麦愛好家なのも健在でなによりだ。


「4人目、北巳神。以上」


「密林配信の北巳神きたみかみ 案内灯ほたる様ですわ」


 そしてまさかの暗殺者のエントリーだ。

 コイツもしかして暇なのかな?

 それとも今回も有栖原に何らかの指示を受けて来たのか。

 同じ建物に蘭月とトレちゃんが居る限り、めったなことは起きないと思うが、注意しておくに越したことはないだろう。


 そして5人目の審査員が自己紹介のためにわざわざ席を立つ。


 腰まで伸びた長い銀髪が、バサッと音を立てて派手にたなびいた。


「密林配信プロダクション所属、射手咲いてざきアルテミス――さ。FMKの諸君――――宜しく」


 いや、誰やねん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る