【アールビーオー・オンライン】えむえむおーあーるぴーじーというジャンルのゲームで遊びますわ【FMK/幽名姫依/bd】#3

《お待ちください、姫様》


 と、ゲーム内のチャットにて幽名を呼び止める声が上がった。

[Golden]という名のプレイヤーからの静止に、冒険に出掛けようとしていた幽名ははたと足を止める。


「これはリスナー……ですわよね? なんの用ですの?」


 問うと数秒の間を置いてから、またもゲーム内のチャットで返事が飛んでくる。


《お出かけになる前にギルドを設立するのはどうでしょうか》


「ギルド?」


《ゲームの中で一緒に活動するグループのようなものにございます》


 端的な説明。しかし幽名は首を傾げる。


「そのギルドとやらを作る意味は?」


《ギルドには様々なメリットがございます。詳しくはbdに聞くのがよろしいかと》


 確かにいちいちチャットに全部書かせるのも手間だろう。

 幽名は質問の矛先をbdに変える。


「bd様」


『はいはい、ギルドですね。どんなネトゲでも基本的にはギルドに入っておいた方が得な場合が多いです。プレイスタイルにもよるでしょうけども』


「ふむ」


『アールビーオー・オンラインでは、ギルドの活躍に応じてシーズン報酬が与えられたり、ギルドメンバーで共有利用出来る島を購入出来るようになるようです』


「島」


『島にはギルド会館や加工施設を設置して、街の施設よりも安価にアイテムの生産が出来ます。それと畑や牧場も設置出来るようですね』


「なるほど、食材などを買わずに済むようになるのは大きいですわね」


『まあ島自体はギルド島だけではなく、個人島も存在してるので、ギルドだけの特権というわけでもないですが』


 bd曰く、自分で使う分の食材などを確保するだけなら、個人島の所有だけで事足りるのだという。ギルド島はあくまでも無いよりあった方が良いくらいに考えといた方が良いそうだ。


『その他ギルドに所属してないと参加出来ないコンテンツとしては、領土戦などが挙げられますね』


「領土戦?」


『PvP……プレイヤー同士で戦ってマップ上の土地を奪い合うコンテンツですね。ギルド単位での戦いになるのでPvPではなくGvGといった方が適切ですが』


「そのような要素があるのですね」


『領土を確保するメリットは、高ティアの素材が取れる土地を占有出来ることです。あとは保有領土内でも畑を作ったり出来るようです』


「なるほど」


《姫様、これは姫様の威光をアールビーオーの大地に知らしめる好機にございます》


[Golden]が何事かを主張してくる。


《この大陸全てを姫様の支配下に置きましょうぞ。さすればこのゲームの中において姫様の名を知らぬ者はいなくなるでしょう》


「それは……悪くないですわね」


『正気ですか』


 諸般の事情から少しでも名を売りたい幽名にとって、Goldenの提案は渡りに舟とも言えた。

 ここ数ヶ月で幽名も世界の広さを知った。

 世の中には幽名が思っていたよりもずっと多くの人間が生きており、しかも人それぞれ見ている方向が違うため、基本的に自己が興味のあるコミュニティにしか目を向けない人間が大多数を占めている。


 例えばこのアールビーオー・オンラインにしか興味がない人間というのも中には存在していることだろう。そういう人間はこの先、幽名姫依の名を知ることなく生涯を終える可能性すらある。

 しかしここで幽名がゲーム内で御旗を掲げれば、そのきっと幽名と関わることのなかっただろう人間にも名前を知ってもらえる可能性が増すのだ。

 それだけで、Goldenの話に乗る価値が大いにあるように思えた。


「良いですわね、アールビーオー・オンラインでの目標が出来ましたわ」


 目的無くフラフラとしていたプレイに、ようやく確固たる指針が定まった。


「目指せ全領土征服ですわ」



 その後、幽名が設立したギルドには、アールビーオーを元からプレイしていた臣民達が押しかけて来たという。

 ギルド民の中には、アールビーオー内でかなりの上位の強さを持つプレイヤーが居たり、わざわざ元居たギルドを抜けてまで駆け付けてきたプレイヤーなども居た。

 そんな調子で幽名姫依率いるギルド[Future Majestic Knights]は、瞬く間にアールビーオー・オンラインで名を上げていくことになる。

 良い意味でも、悪い意味でも。




 ■




――とあるアールビーオー・オンラインのギルドチャットの様子。




「ギルマス、ちょっと耳に入れときたい件があるんすけど」


「今金勘定で忙しいんや、手短に頼むで」


「じゃあ手短に。RexとAloha、それからDragonflyがギルドを脱退しました」


「はぁ!? なんでや!」


「なんか別に入りたいギルドが出来たからって言ってた」


「ああ? 全員そう言うてたんか?」


「っすね」


「……引き抜きか? 行先のギルドは掴めとるんやろな」


「えーっと、確か[Future Majestic Knights]とかいう聞いたことないギルドだったかな」


「フューチャー……? なんか聞き覚えある名前やな。そこのギルマスの名前は?」


「Himei_Kasonaって名前だったはず」


「ひめい、かそな……まさか幽名姫依か? 嘘やろ? ほんまかいな」


「誰?」


「最近有名なVTuberや、そんくらいアンテナ張っとけ」


「へー、でも流石に本物じゃないじゃないの? 有名人の名前騙る人間なんてネットにゃ山ほどいるし」


「いや……今調べたけど、本人が配信でアールビーオーやっとったみたいや。配信内でギルドも作ってる。ガチや」


「あー、じゃあインフルエンサーに戦力持っていかれちゃったってことか。ギルマス、ご愁傷様」


「アホか、このまま引き下がれるかいな。同じVTuberとして・・・・・・・・・・・負けてられんわ。そのうち目にもの見せたる」


「おっ」


「おっ、ていうのやめろや」


「よっ」


「よっ、はなんかちゃうやろ。とにかくアールビーオーの経済を牛耳るウチに喧嘩売ったからには、それなりの覚悟をしてもらわんとな。首洗って待っとけや、幽名姫依」





――そのうち続く。

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