【アールビーオー・オンライン】えむえむおーあーるぴーじーというジャンルのゲームで遊びますわ【FMK/幽名姫依/bd】#2

「チュートリアルが終わったあとは何をすれば良いんですの?」


『ここから先は自由にしていいみたいですよ。このゲーム、メインストーリー的なのもないようですし』


「なるほど。ではまずは目標を探すところからですわね」


『マップを南側に降っていくと大きい街があるようなので、とりあえずそこに行くのがいいかと』


 幽名は言われるがまま、街を目指してマップを移動し始めた。

 その後ろをぞろぞろと付き従ってくるリスナーたち。


『まるでピクミンですね』


「ピクミン?」


『あ、なんでもないです』


「それよりも何か見つけましたわ」


『それはダンジョンですね。アールビーオー・オンラインでは、マップ上のランダムな位置にダンジョンが湧くようです』


「入ってみますわ」


『先に街で装備を整えてからの方が……ああ』


 bdの忠告も聞かずにダンジョンに入っていく幽名。

 そしてその後を追うリスナーたち。

 しかし幽名と一緒にダンジョンに入れたのは3名だけのようだった。


「なんだか一気に臣民が減りましたわ」


『ダンジョンにも人数制限があるのでそのせいでしょう。まあ、ティアの低いダンジョンなので、恐らく幽名姫依だけでも攻略は難しくないとは思いますけど』


「ティアとは?」


『等級のことです。このゲームのアイテムやダンジョン、マップ、MOBは、それぞれⅠ~Ⅷのティアが割り振られていて、数字が大きいほど基本的にはレアで強いです。このダンジョンのティアはⅠのようですね』


「ティアの低いダンジョンは、難易度が低くて得られる報酬も低い、ということですわね」


『その通りです』


:ぶっちゃけティアの低いダンジョンは全然美味くないんだよなあ

:戦闘経験値は溜まるからそれ目当てって感じ


「とにかく奥に進んでみますわ」


 少し進んだところにMOBが湧いていた。

 ネズミ、こうもり、盗掘者。いずれもチュートリアルで戦ったMOBと大差ない強さだ。得られるシルバーも雀の涙。

 それでも奥に進むにつれて、少しずつ手応えのある敵が出て来るようになってくる。


「どこからか岩が振って来てますわ」


『かなりの遠距離から投石攻撃を受けてますね。赤い範囲に入ってるとダメージを受けるので避けましょう。あ、臣民が向かいましたね』


 が、多少強い敵が出て来ても付いてきた3人の臣民が敵を蹴散らしていく。

 何気にこの3人がそこそこ強いらしく、前線で暴れ出すと幽名が何をするまでもなく敵が全滅してたりする。楽ちんではあるが、幽名自身に経験値が溜まらないのは考え物だ。


 というのもこのゲーム、ティアの高い武器や防具を装備するためには、対応する装備の熟練度を上げなくてはならないらしいのだ。

 そのためには、熟練度を上げたい装備品を装備した状態で、MOBを倒して戦闘経験値をためなくてはならない。

 しかもアールビーオー・オンラインにはレベルという概念がなく、プレイヤーの能力値は完全に装備依存。

 つまるところ、幽名が手を出す前に臣民がMOBを狩りつくしてしまったら、それだけ成長の機会が失われるということになる。このままでは一生弱いままだ。


『臣民の方々はちょっと幽名姫依にも出番を譲るべきですね。過保護が過ぎます』


 それを危惧して臣民に忠告を入れると、あっさり熟練者っぽい3人は幽名に先頭を譲った。

 なんて物分かりの言いリスナーなんだろうか。


 そうして幽名に適度に経験を積ませながらダンジョンの更に先に進む。

 この頃になると幽名もこのゲームの戦闘に慣れて来てきたらしく、しっかりとスキルを使いこなしながら敵を倒せるようになっていた。各スキルの効果や、クールタイムへの理解も出来ている。操作方法自体は単純なので、マテラテであれだけの動きが出来る幽名ならこのくらいは当然なのだろうが。


「あ、なにか大きなMOBが居ますわ」


 サクサクとダンジョンの最奥にやってきた姫様一行。

 最奥にはデカイツルハシを担いだ大男が控えている。その大男が画面に映った瞬間におどろおどろしいBGMまでもが流れ出す。どうやらあの大男がダンジョンのボスのようだ。周囲には雑魚MOBも数体居る。


『あれがボスですよ』


「ではボスはわたくしが。露払いは臣民たちに任せますわ」


 幽名の指示に従って臣民たちが雑魚を始末していく。

 一方、幽名はひとり勇敢にボスへと立ち向かって行った。


『ティアⅠダンジョンとはいえ、ボスの火力はかなり高いから注意してください。範囲攻撃はかならず避けるよう徹底した方がいいですよ』


「心得てますわ」


 その言葉通り、幽名は一度もボスの大技に当たることなく敵の体力を削っていく。

 しかし悲しいかな。完璧に立ち回ってもDPSと体力で幽名は大幅に負けている。


 このままではやられてしまう。

 そう思ったところで臣民が割り込んできて、ボスにトドメを刺してくれた。


『危ないところでしたね』


「むむむ……悔しいですわ」


『だから装備を整えてからと言ったのですよ。RPGは基本的に数値で殴り合うゲームですから、いくら完璧に動いても数値が低かったらそうなります』


「勉強になりますわ」


『まあ今の戦闘で剣の熟練度も上がったことですし、次は街でティアⅡの剣でも買いに行きましょう』


「剣以外の装備も使ってみたいですわね」


『それも街に行ってからです。はよ街にいけ』


:bdイライラで草

:おこんなっつ

:怒った? AIなのに怒っちゃった


『怒ってませんよ、気のせいです。あ、ボスを倒したあとは宝箱を開けるのを忘れずに』


「えーっと、色々入ってますわ!」


『まあゴミ……あまり価値のあるものは入ってませんね。ティアⅡのケープは装備して、それ以外は街で売ってしまいましょう』


「はーい、ですわ」


 ■


 ティアⅠのダンジョンを無事踏破した幽名は、bdに指示されるまま近くの街までやってきた。

[wood town]という安直な名前の街の内部は、読み込みに遅延が発生するレベルでプレイヤーが集まっている。


「人が多すぎて自分の居場所がまず分からないのですけれど」


『そこはなんとか頑張りましょう。とりま武器を買いたいのですよね?』


「そうですわ。武器屋さんはどこにあるのでしょうか」


『ええっとですね……アールビーオー・オンラインは、その特徴としてゲーム内のほぼ全てのアイテムをプレイヤーが生産しています。で、プレイヤーメイドの装備は大抵オークションに出品されているそうなので、そちらを覗きに行きましょう』


 マップを開くと、確かに街の中にオークション会場へのマップに繋がる道があるようだった。

 別プレイヤーの山に埋もれる自キャラを動かすのに苦戦しつつ、幽名はなんとかオークションマップまで辿り着く。


「来ましたけれども、どこでアイテムを買えば良いのでしょう?」


『そこですよ、そこ。その人がやたらめったら群がってるカウンターの所です。そこがオークションの窓口のようですよ』


 ひとつしかない窓口に大勢のプレイヤーが押しかけているせいで何も見えない。

 とりあえず人ごみに埋もれてカウンターに接近。適当に当たりを付けて右クリを押すと、それっぽいウィンドウが開いてくれた。


『そこからアイテムを売り買い出来るようですよ。試しに購入タブを押して、買いたいアイテムを検索してみてください』


 購入タブを押し、アイテムのカテゴリ武器から剣を選ぶ。

 そこから更にティアを絞り込み、なんとか欲しい武器を見つけることが出来た。


『ここに並んでいるのはさっき言ったように、全部プレイヤーが出品しているアイテムですね』


「同じアイテムでも値段にバラつきがあるように見えますわ」


『各々が好き勝手に値付けしてますから。あと一応同じアイテムに見えても、微妙に性能が違っていることもあるそうです。その辺りは生産したプレイヤーのスキル熟練度次第のようですが』


「なるほど。……もしや少しでも良い商品を作って、それをちょっと良いお値段で売るとお金を儲けられるのでは?」


『そうですね。一般的に生産職と呼ばれるプレイヤーは、そうやって生計を立っているようですよ』


:そこに気付くとは……

:やはり天才でしたか

:流石姫様

:プレイヤー主導で経済を回してるすげえ良いゲームだよ、これ

:経済に疎い姫様にぴったりのゲームですね

:貴様姫様を遠回しに馬鹿にしたな?


 またもチャットが荒れ始める。

 言い争うリスナー達が静まるまで3分掛かった。


 密カスから急激に登録者数が増え、同接のアベレージも伸びて来た幽名の配信だったが、やはり人が増えたことに対する弊害なのだろうか。どうしても定期的に荒れてしまう。

 経験豊富な配信者ならもっと手際良く事を収めるか、むしろリスナー同士の争いなどスルーするのかもしれない。しかし幽名は毎度律義に仲裁に入って、チャットが落ち着くまで丁寧に話しかけていた。それがかまってちゃんな一部のリスナーの増長を招いているとも知らずに。


「ところで、わたくしもアイテムを作ってみたいですわ」


 それはさておきゲームの話に戻る。

 話の流れで生産職に興味を持った幽名が、アイテム作りに必要な知識をbdに求める。


『アイテムと言っても色々種類がありますが、何を作りますか?』


「そうですわね……オークションの品揃えを見たところ、お料理もあるようなのでシェフを目指すのもいいかもしれませんわね」


『料理をするなら、まずは食材を仕入る必要がありますね』


「食材はどこに?」


『それもオークションで買うか、もしくは自分で畑を持って栽培するか、そのどちらかですね』


:お前ら! 姫様が食材をご所望だぞ!

:かき集めろ!


 第3の選択肢である人に貢がせるという方法で、幽名の元に大量の食材が届けられた。


「みなさまありがとうございます。これでシェフに成れますわね」


『完全に姫プじゃないですか。まあ、遊び方は人それぞれですが』


 リスナーから貰った食材を持って、街の調理場に直行。そこで料理を開始する。


「料理も最初はティアの低いものしか作れないのですね」


『はい。大量生産してスキルレベルが上がれば、高ティアのものも作れるようになるので、貰った食材を一気に消費してしまいましょう』


 安価なスープやサラダを量産して地道にスキルレベルを上げていく。

 その間に、どんどん新しい食材が幽名の元に届けられていた。

 調理場から動くことなく食材が集まって来るので、幽名は一心不乱に料理レベルを上げていく。

 小一時間後。


「もう作れない料理はありませんわ」


『酷いパワーレベリングを見ました』


 あっという間に全てのティアの料理を作れるようになった。


「ですが料理毎にスキル熟練度が設定されているので、完全習得まで先は長そうですわね」


『料理の種類だけスキルツリーが分かれてますからね。そこはやり込みの領域ですよ』


「料理はもう飽きましたわ。現実の料理と違ってワンクリックで作れてしまいますし、もっとやり応えのある遊びをしたいですわ」


『じゃあ冒険にでも行きますか』

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