【誕生日】18歳ににゃったよ~!【薙切ナキ/FMK】

【誕生日】18歳ににゃったよ~!【薙切ナキ/FMK】




「みんにゃ~! 今日は来てくれてありがとう~! にゃきナキは今日またひとつ大人ににゃったよ~!」



:おめでとう!

:これでようやく収益化出来るね

:人間の年齢で言う所の18歳かな?

:まだ投げ銭出来ないから代わりにボイス買いました!

:金額ブーストして買ったよ

:ナキちゃんおめでとう!



「ボイス買ってくれた人もありがとう! 金額ブーストも無理しない範囲でね。みんにゃ本当にありがとう!」



:他のライバーからプレゼントとか貰ったりした?



「うん、貰った貰った。ちょうどこの配信を始めるちょっと前に、事務所でみんにゃにお祝いしてもらってたの」



 ■



「瑠璃ちゃん誕生日おめでとー!」


 その日事務所を訪れた瑠璃を出迎えたのは、けたたましクラッカーの発砲音だった。

 次いで聞こえて来たのはみんなが瑠璃の誕生日を祝う声。

 FMKのライバーとスタッフ総出でのサプライズパーティーだ。


「うわっ、びっくりした」


 というのは真っ赤な嘘だ。

 代表の呼び出し方があまりにも露骨だった時点でこうなるのは予想していた。

 しかしいくら普段の態度がつっけんどんな瑠璃でも、みんなからの好意を台無しにするほど空気を読めないキャラを演じるような真似はしない。


「みんな私の誕生日なんて知らないと思ってた。ありがとう……嬉しい」


 ここは素直に感謝の気持ちを述べておく。

 分かってはいたけど、嬉しいと思ったのは本当だから。


「お? なになに瑠璃ちゃん、今日はやけに素直じゃん? デレ期きた? きたん? 泣きそうになってる?」


「イヅル、その辺にシテおくデース」


「あ、トレちゃんどこ掴んで……いたたた! 頭蓋骨割れる! なにそのパワー! デースってDeathってコト!?」


 ウザ絡みを仕掛けてきた一鶴は、トレちゃんによって無理やり引き剥がされた。

 夏合宿が終わってからというもの、トレちゃんはちょっとバイオレンス路線に目覚めかけてる気がすると瑠璃は感じていた。主に一鶴に対してだけだが。


「それでは早速ですが、わたくしからの誕生日プレゼントをお受け取りくださいませ」


 と、皆でわちゃわちゃしている所に、幽名が馬鹿でかいホールケーキを抱えて事務所の奥から姿を現した。


「わたくしが作りました」


 そんなドヤ顔でテーブルの上にケーキを乗せる幽名。

 プロ顔負けのデコレーションケーキだ。

 どんどん料理が上手になっていっている幽名だが、とうとうホールケーキまで焼けるようになったらしい。


「ありがとう姫様」


「この程度、瑠璃様から受けた恩を考えればまだまだ足りないくらいですわ」


「そんなことない。十分すぎるくらいだよ」


 幽名が頑張っていることは瑠璃が誰よりもよく知っている。

 辛い境遇にもめげず、誰にも悲しい顔を見せないように振舞っていることも。全部。

 そんな友達からの贈り物が嬉しくないはずがない。心が籠った何よりの宝物だ。

 

 そのケーキに七椿が手際良く蝋燭を刺して火を付けて行く。

 みんなに促されるまま瑠璃は蝋燭の火を一息で吹き消す。

 この儀式を終えた途端、急に歳を取った実感が湧いてくるのは何故だろう。

 万雷の拍手に祝福されながら、瑠璃はそんな風に喜びを噛み締めた。


「じゃあ、あたしからのプレゼントね。はい、アマギフ5000円分」


 からの、小槌から手渡された真心0%のプレゼント。

 いや、嬉しいけど。嬉しいけれども。


「おいコラ、一鶴。お前に貸したプレゼント代は1万だったよな? 残り5000円はどこに消えた? 返してもらってないが? フランクリン?」


「プレゼントを買う所までは見届けたが、その後のことは知らないな」


「細かいことはいいじゃないの! めでたい席なんだから」


 どうやら一鶴はプレゼント代をくすねたらしい。

 本当に心の底から反面教師だと思う。



「うん、一鶴さんもありがとう……?」


「疑問に思っちゃだめよ瑠璃ちゃん。誕プレってのは気持ちだから」


「気持ちもゼロな気がするんだけど……まあいいや」


 こんな大人にだけはならないように気を付けよう。

 そう心に誓う瑠璃なのだった。


 他にも色々なプレゼントを貰った。

 奥入瀬からはオリジナルソングのプレゼント。歌枠に使って欲しいとのことだ。

 トレちゃんは新作のゲームソフト。

 bdは自作のPC用アプリケーション(何に使うのか分からないが、とにかく凄いアプリらしい)

 七椿からはちょっと高い腕時計。

 フランクリンからは花束。ちょっとキザだと思った。

 そして代表からは、


「はい、誕生日おめでとう」


 100万くらいするハイスペックPCが送られてきた。


「代表さん? そのプレゼントは流石に高価過ぎない?」


「うわー! ありがとう!」


「瑠璃ちゃん???」


 正直これが一番欲しかったもので、一番嬉しかったものだった。

 金を全く惜しんでない辺り、妹への愛を全然隠しきれてないとんだ兄バカだ。

 周囲に兄妹だと知られたらマズイというのに、誕生日だからといってお構いなし。

 一鶴が露骨に胡乱な眼差しを向けて来るが、とりあえずは知らんぷりだ。

 瑠璃も今日だけは、素直に兄からの好意を受け取ることにした。


 やっぱり持つべきものは金持ちの兄だ。

 そう思う瑠璃なのであった。

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