VTuber事務所《FMK》 ~宝くじで10億当たったからVTuber事務所作ったらやべえ奴らが集まってきた~
【夏合宿7日目】オリジナル楽曲を歌いマス!【FMK/スターライト☆ステープルちゃん/笛鐘琴里/他】
【夏合宿7日目】オリジナル楽曲を歌いマス!【FMK/スターライト☆ステープルちゃん/笛鐘琴里/他】
【夏合宿7日目】オリジナル楽曲を歌いマス!【FMK/スターライト☆ステープルちゃん/笛鐘琴里/他】
「ンー……アーアー! 始まりマシタネ! 聞こえてマスカー!?」
:お
:はじまった
:☆ちゃんキター!
:聞こえてるよー!
:初見です
:密カスから来ました
:うおおおお
:ハジマタ
:☆ちゃんお帰り!
「FMKのキボーの星、ウタッテ踊れテ戦える、スーパーアイドル系VTuberのスターライト☆ステープルちゃんデース! ゴブサタしてマシタ! 今日からステちゃん復活デス! ☆ちゃんじゃナクテ、ステちゃんとヨンデクダサーイ!」
ご無沙汰。という言葉を使うほど間が空いていたわけじゃない。
しかしV業界というやつは、ほんの一週間配信してなかっただけで久しぶりなんてリスナーから言われる界隈だったりする。
VTuberは今世界に星の数ほど存在していて、ほんの少し活動していなかっただけでリスナーの心はあっという間に他のVへと流されていく。
にも関わらず、今日はいつも以上のリスナーが配信を見に来てくれている。
それは自分が不在の間も仲間たちがリスナーの心を繋ぎ留め、そして今日の日のために場を温めておいてくれたお陰でもある。
素晴らしい仲間に恵まれたと、スターライト☆ステープルちゃんは心の底からそう思った。
「いやほんと☆ちゃんがいない間色々あったんだから。おとといの密カスでのあたしの活躍見てた? あのbdに土付けてやったんだから」
「アーカイブで見マシタヨ。ヒメ様凄かったデス! FPS初心者のムーブじゃナカッタデス!」
「それほどでもありませんわ」
「あたしは? ねえあたしは?」
「サスガはコヅチという感じのラストアタックだったデス」
「それ色んな人に言われんだけど素直に喜べない褒められ方なんだよなー」
「そもそも誰も褒めてにゃいんだけど」
ナキの指摘に小槌以外のみんなが笑う。
でも小槌にも勿論感謝しているので、ハグして慰めると凄いデレデレしながら機嫌を直してくれた。死ぬほどチョロイ。
「あの……それよりもステちゃんさんとbdさんは、今日が初顔合わせでしたよね? お互いに自己紹介とかは……」
「エ、ア……アー、ソウデシタ! FMKにもニューカマー、新しいカゼが来てたんデシタ!」
琴里に言われて気が付いた。そういえば表立ってbdと絡むのはこれが初めて、ということになっているのだった。
全然bdとは初じゃないどころか、むしろbdをFMKに引き込んだ張本人が自分なのだが、それを大っぴらに言うわけにもいかない。あくまでも自分とbdは初対面の体で通さなくては。
『お初にお目にかかります、bdです。宜しくお願い致しますスターライト☆ステープルちゃん』
「ステちゃんでイーデスヨ。ヨロシクデース」
見たところbdはFMKの仲間として既に受け入れられている様子だった。
小槌がbd加入に反発したり、逆にbdが小槌を見て人間を滅ぼしたくなったりしてないか不安だったが、そういう展開はどうやら心配しなくて良さそうだ。小槌のいい加減さは、ステープルちゃんでさえ、たまに心の中でイラっとすることがあるほどだから油断は出来ないが。
それからもちょっとだけ雑談をした。
自分がいなかった間に起きた出来事とか、残りの夏は何して遊ぼうかとか、小槌が手に入れた100万の使い道をみんなで勝手に決めたり、それで小槌が半泣きで「100万は勘弁してください」と土下座してきたりとか……。
話しても話しても、次から次へどんどんと話したいことが湧いて出て来る。
自分にとってみんなと過ごすこの時間は、どうしようもないくらいに本物で、かけがえのないほどに大切な宝物となっていた。
戦争の道具として生み出された自分には、勿体なさ過ぎるくらいに幸せな時間。
でもこれくらいじゃ満足出来ない。まだまだ足りない。もっともっと楽しいことをみんなとやりたい。
一緒に笑って、一緒に泣いて、喜びも悲しみも共に分かち合い、みんなと並んで未来に行きたい。
その最初の一歩として、今日ここで歌うのだ。
「ソレジャア、そろそろ歌いマスカ」
雑談に区切りを付け、ステープルちゃんが席を立つ。
ボーカルとコーラスはそれぞれ専用のブースで歌うことになっているからだ。
「あ……待ってください」
ブースに入る直前に、琴里がステープルちゃんに駆け寄ってきて、手をぎゅっと握ってきてくれた。
緊張による震えもなければ、不安で手が冷たくなっていることもない。
琴里の手は、ただただ安心感に溢れる暖かさに満ちていた。
「ステちゃんさん……楽しみましょう!」
楽しみましょう。
その一言で、ステープルちゃんの肩が少しだけ軽くなる。
なんてことはない。なんだかんだで一番緊張していたのはステープルちゃんだったというだけの話。
「オフコースデス! 全力で楽しみマス!」
全力でぶっつけ本番。
でも何故か、失敗する気はしなかった。
閉ざされた空間でひとり歌うのは心細くもあるが、心は仲間と繋がっている。何も怖くはない。
「この曲は、ワタシのワガママから始まって、ミンナがワタシのために作ってくれた、サイコウの一曲デス」
この一曲のために随分とみんなを振り回してしまったように思う。
だからそれだけ愛が強い。
みんなへの愛が。
その万感の思いを声に乗せ、今世界中へと伝え、遺していく。
みんなと創ったこの奇跡を。
「聞いてくだサイ……曲名は【スターレイン☆コンチェルト】……デス!」
かくして、スターライト☆ステープルちゃんのオリジナル楽曲は、お披露目と同時に真の完成を迎えたのであった。
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